お問い合せ

完訳 7つの習慣-人格の回復-18

刺激と反応の間

 

想像を絶する過酷な状況の中で、ヴィクトール・フランクル(訳注:オーストリアの精神科医・心理学者)は人間だけが授かった自覚という能力を働かせ、人間の本質を支える基本的な原則を発見した。

それは、刺激と反応の間には選択の自由がある、という原則である。

選択の自由の中にこそ、人間だけが授かり、人間を人間たらしめる四つの能力(自覚・想像・良心・意思)がある。

自覚は、自分自身を客観的に見つめる能力だ。

想像は、現実を超えた状況を頭の中に生み出す能力である。

良心は、心の奥底で善意を区別し、自分の行動を導く原則を意識し、自分の考えと行動がその原則と一致しているかを判断する能力である。

そして意思は、他のさまざまな影響に縛られずに、自覚に基づいて行動する能力である。

人間は、人間だけが授かっている四つの能力を使えば、本能や調教とは関係なく自分で新しいプログラムを書くことができる。

だから動物にできることには限界があり、人間の可能性は無限なのだ。

しかし私たち人間が動物のように本能や条件づけ、おかれた状況だけに反応して生きていたら、無限の可能性は眠ったままである。

人間だけに授けられた四つの能力が、人間を動物の世界よりも高い次元へ引き上げている。

これらの能力を使い、開発していくことができれば、すべての人間に内在する可能性を引き出せる。

その最大の可能性とは、刺激と反応の間に存在する選択の自由である。

 

「主体性」の定義

 

人間の本質の基本的な原則である選択の自由を発見したフランクルは、自分自身の正確な地図を描き、その地図に従って、効果的な人生を営むための第1の習慣「主体的である」ことを身につけ始めた。

主体性(proactivity)とは、自発的に率先して行動することだけを意味するのではない。

人間として、自分の人生の責任を引き受けることも意味する。

私たちの行動は、周りの状況ではなく、自分自身の決定と選択の結果である。

私たち人間は、感情を抑えて自らの価値観を優先させることができる。

人間は誰しも、自発的に、かつ責任を持って行動しているのである。

責任は英語でレスポンシビリティ(responsibility)という。

レスポンス(response=反応)とアビリティ(ability=能力)という二つの言葉でできていることがわかるだろう。

主体性のある人は、このレスポンシビリティを認識している。

自分の行動に責任を持ち、状況や条件づけのせいにしない。

自分の行動は、状況から生まれる一時的な感情の結果ではなく、価値観に基づいた自分自身の選択の結果であることを知っている。

人間は本来、主体的な存在である。

だから、人生が条件づけや状況に支配されているとしたら、それは意識的にせよ、支配されることを自分で選択したからに他ならない。そのような選択をすると、人は反応的(reactive)になる。

反応的な人は、周りの物理的な環境に影響を受ける。

衝動を抑え、価値観に従って行動する能力こそが主体的な人の本質である。

反応的な人は、その時どきの感情や状況、条件づけ、自分を取り巻く環境に影響を受ける。

主体的な人は、深く考えて選択し、自分の内面にある価値観で自分をコントロールできるのである。

エレノア・ルーズベルト(訳注:フランクリン・ルーズベルト大統領の夫人)は

「あなたの許可なくして、誰もあなたを傷つけることはできない」という言葉を残している。

ガンジーは「自分から投げ捨てさえしなければ、誰も私たちの自尊心を奪うことはできない」と言っている。

私たちは、自分の身に起こったことで傷ついていると思っている。しかし実際には、その出来事を受け入れ、容認する選択をしたことによって傷ついているのだ。

深く正直に「今日の私があるのは、過去の選択の結果だ」と言えなければ、「私は他の道を選択する」と言うことはできないのだ。

私たちは自分の身に起こったことで傷つくのではない。

その出来事に対する自分の反応によって傷つくのである。

もちろん、肉体的に傷ついたり、経済的な損害を被ったりして、つらい思いをすることもあるだろう。

しかしその出来事が、私たちの基礎をなすアイデンティティまでも傷つけるのを許してはいけない。

むしろ、つらい体験によって人格を鍛え、内面の力を強くし、将来厳しい状況に直面してもしっかりと対応する自由を得られる。そのような態度は他の人たちの手本となり、励ましを与えるだろう。

ヴィクトール・フランクルによれば、人生には三つの中心となる価値観があるという。

一つは「経験」、自分の身に起こることである。

二つ目は「創造」であり、自分でつくり出すものの価値だ。

そして三つ目は、「姿勢」である。

不治の病というような過酷な現実に直面したときの反応の仕方だ。

フランクルはパラダイム構築において、この三つの価値のうちで一番大切なのは「姿勢」だと言っている。つまり、人生で体験することにどう反応するかがもっとも大切なのである。

パラダイムシフトは、困難に直面したときにこそ起こる。

厳しい状況に置かれると、人はまったく新しい視点から世界を眺めるようになる。

その世界にいる自分自身と他者を意識し、人生が自分に何を求めているのか見えてくる。

視野が広がることによって価値観が変化し、それが態度にも表れて周囲の人々を鼓舞し、励ますのである。

 

 

この続きは、次回に。

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