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ドラッカーとの対話  未来を読みきる力 33

●  ドラッカー名言録その7 「中小企業が〝巨人〟に鵜呑みにされて消滅するなどというのは

    まったくナンセンスである」

 

スモール・ビジネスはしたたかに生きているのみならず、この20年間、アメリカで

大企業以上に雇用を創出し、ベンチャーの将来も中小企業に託されているのである。

「小規模ながらはっきりと限定された分野で自らの主導権を確立することによってのみ、

サバイバルは可能だ」とドラッカーは言う。

中小企業の強味のひとつは「最高経営責任者が、キーとなる要員全員について、

その野心、願望、思考様式、行動様式、強味と限界、過去の実績と将来性を

よく知りうることである」と説く。

 

● ドラッカー名言録その8 「アクション(行動)によるフォローアップ(追査)なきプロジェクト(計画)は、

    パフォーマンス(実績)を生まない」

 

どんな事業でも、具体的な行動計画を立てたのち、その実施(インプリメンテーション)が

伴わなければ、すべては単なる話し合いか、希望的観測か、机上の空論に終わってしまう。

それを戒めたのが、この言葉である。

とどのつまりは、戦略を特定のシナリオなりアクション・プランに落とし込むこと、

さらにそれを実践に移すことができなければ、すべてはナンセンスに終わるという。

しかも、いくら実行しても何がどれだけなされ、どこがダメで、どこが思いもかけず良く、

どれが未達成のままで、それは何ゆえというフィードバックが行われないかぎり、

真の成果には結びつかないというのが、かねてからのドラッカーの主張である。

計画したことは実行に移す—-人間はとにかくこうした当たり前のことを、

当たり前のようにやるのが苦手だ。

「背後での苦労を一切感じさせずに料理するのがプロとして一番難しいことだがね」

ドラッカーがそう言い添えてくれたのが強く印象に残っている。

 

● ドラッカー名言録その9 「問題解決を図るよりも、新しい機会に着目して創造せよ」

 

第1に、昨今のように事態がどんどん変わっていく際に、「昨日」の原理原則や

出来事にベースを置いて問題を解決すること自体、無意味に近いという思いが強いからである。

それよりも、明日の新しいチャンスに焦点を当てた創造的な開発の方が、ずっとベターだという。

 

第2の理由として、このところの50年間アメリカのビジネス・スクールでは、

問題解決型の経営教育ばかり行われてきたので、この思想がビジネスマンたちに

染みついてしまったことへのドラッカーの反発である。

むろんビジネス・スクールにしてみれば、問題解決の方は一定の筋道を通して

教えられるが、創造性の方は、そうおいそれとは教えられないという事情もある。

また、答えの成否ばかりを気にする教育を小中学校から施されてきているので、

ビジネスマンたちはいつもプロブレム・ソルビングばかり考えるようになり、

お仕着せの正しい答えのみを得ようとする心理が強く働いてしまうのであろう。

 

第3にドラッカーは、問題点にのみ拘泥するのは、人間や組織の弱味に

目を向けるがゆえに病理的な考え方に毒されてしまった結果であると指摘するのである。

人間や組織の弱味不得手なところにかかずらわっていても何も始まらない。

強味と得手に帆をあげ、その得意な点に十分栄養を与えた方が事は前進する、

という思想をドラッカーは強く抱いているのである。

「何かが難しかったら、それをどうしても仕上げようなどと無理をせずに、

何か別なことを新しくやりなさい。

もっとやさしくて自分に向いていて手に合ったことを—–。

すると、古いことも、2年後には自然と終わっていたり、立ち消えになっていたりするものですよ」

とくに今日のように目まぐるしく変化する状況下にあっては、変化に対する感受性と

創造性に対する感性をよく磨くことが肝心で、これこそ閉塞状況に風穴を

開けるカギだとドラッカーは言う。

系統的に万事を廃棄することをシステムの中に内臓しておくことの方が、

問題解決に腐心するよりもずっと大事であると説くのである。

しかも製品やサービスが失敗したからではなく、成功しているときだからこそ、

2年ぐらいで捨てたり撤退したりしなければいけないし、2年成功したとうことは、

十分その役割を果たしたことになるとすら言い切っている。

 

 

この続きは、次回に。

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