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池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑨

Chapter3 「見えざる手」が経済を動かすアダム・スミス

 

—ここからは、経済を学問として分析し、世界に大きな影響力を与えた4人の経済学者を取り上げます。

まずは、近代経済学の父と呼ばれているアダム・スミスです。

彼は著書である『国富論』で自由放任を唱えました。

「見えざる手が市場を動かす」とはどんな意味なのでしょうか?

 

経済学というのはその時代の問題に応じた処方箋なのです。

 

近代経済学の父、アダム・スミス

アダム・スミスは、「近代経済学の父」と呼ばれています。

彼が1776年に発表した『国富論』は、世界経済に大きな影響を与えました。

翻訳がいくつか出ていて、『国富論』以外に『諸国民の富』という題名の日本語訳もあります。

彼が展開した理論は、そもそも私たちにとって富、財産とは何だろうか、そして富はどのようにして

増えていくのかということを考えたのです。

そのしくみがわかれば、それを促進させればいい。あるいはうまくいかないところをなくしていけば、

みんなが豊かになれるであろう、それはどういうことなのかを論じたのです。

彼が最初に発表した『道徳感情論』は、非常に高い評価を得ました。

彼は人々の感情あるいは道徳的な行動を分析しました。

人々が利己的な行動、つまり他人のことより自分の利益ばかり考えて働いているのに、なぜ世の中は

うまくいくのかということを考えているうちに、自分なりに経済学を考えるようになったのです。

 

アダム・スミス Adam Smith(1723〜1790)

スコットランド生まれ。1759年『道徳感情論』を発表し、高い評価を得る。

53歳で『国富論』を発表。近代経済学の基礎をつくる。

 

 『道徳感情論』アダム・スミスの最初の著書

 

「同感」の感情で社会秩序は保たれている

『道徳感情論』の中で彼が強調しているのは、「同感」という感情、人間の心の動きです。

「あなたの意見に同感する」というふうに使いますよね。あの「同感」です。

「同感」という概念に行き当たりました。どういうことかというと、みんながそれぞれ勝手な行動を

とっているけれども、他人から「同感」が得られる限り、社会的に正当だと認められるからでないか

考えたんですね。

 

人間の行動は、自然とブレーキがかかります。

 

輸出と輸入、どちらも国を豊かにする

「富とは国民の労働で生産される必需品と便益品」。

生活必需品があってこそ富ですよね。これがなければ非常に貧しい。

便益品というのは、言ってみればやや贅沢をするものです。

これを合わせて消費財と呼びますが、これこそが富であるとアダム・スミスは考えました。

いろいろなものを消費する、それが富であると考えたんですね

なぜこのような考え方をしたのか。

実は当時最も一般的な考え方であった「重商主義」を批判したのです。

重商主義の考え方では、輸出をすれば金や銀や銅など貴金属が国に入ってくる、輸出はすばらしい、

貴金属こそが富なんだと考えます。一方で輸入すれば支払いに貴金属を使うことになる。

国から貴金属が出ていってしまう。輸入は国を豊かにしないという考え方です。

いまから思えば変な考え方かもしれませんが、ものを輸出すれば国が豊かになる、輸入すると

国が豊かにならないという考え方は、現代の日本の政治や経済の問題でも出てきますよね。

この考え方を否定したのがアダム・スミスだったのです。

彼の考え方はこうでした。輸出をすることによって貴金属が国に入ってくることはいいことだ。

一方で、その貴金属を使って海外からいろいろなものを買う、すなわち輸入をすると、生活必需品や

便益品などのさまざまな消費財が国内に入ってくる。

それは国民の生活をより豊かなものにする。だから輸出だけじゃなく輸入によっても私たちの暮らしは

豊かになる、これこそが富なんだというものです。

つまり、富を増やすためには海外との自由な貿易を行う。

それと同時に国内でも自由な経済活動をすることによって富が増えていく。

これがアダム・スミスの考えです。

 

消費財:必需品+便益品

 

重商主義:18世紀の産業革命以前のヨーロッパではこの考えが主流だった。

 

アダム・スミスの考え=富とは消費財 

 輸出だけでなく、輸入によっても国は豊かになる。

 

重商主義= 富とは貴金属

 輸出によって金・銀を得ることが国を豊かにする

 

 

 

 

この続きは、次回に。

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