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超ロジカル思考 「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング⑫

STEP4  ベゾスに学ぶ「常識から自由になる」トレーニング

 

                    Jeffrey Bezos

 

✔️ 売上高7兆円の超巨大小売業

次に登場する天才は、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスである。

ベゾスは1994年にインターネット書店のアマゾン・ドット・コムを立ち上げた。

推奨機能や翌日配送などを強みに事業を拡大し、現在は売上高7兆円を超えるまでに至っている。

本や音楽にとどまらず、家電や雑貨などにも品揃えを広げ、リアルな店舗に大きな脅威を与える

存在となっている。それでは、ベゾスが世の中に与えたインパクトについて理解するために、

ここでまたエクササイズに取り組んでもらうことにしよう。

 

Exercise  4-1

ベゾスの登場によって、世の中がどう変わったのか考えてみてください。

ベゾスが社会に及ぼした影響とはどのようなものでしょうか?

 

ベゾスは本屋の概念を変えた。かつては電車に乗って繁華街の大手の書店に足を運んでいたが、

今はキンドルのスイッチを入れればそこに書店が現れる。

以前は本屋の棚を眺めながら読みたい本を探し、そこになければ諦めていたが、今は探したい本を

探してきて並べてくれる。本だけでなく、音楽、映画、家電、おもちゃ、家庭用品なども、

キンドルのスイッチを入れるだけで買えるようになった。

スティーブ・ジョブズがコンピュータや電話を「再発明」したといわれるように、ベゾスは

書店や小売店を再発明したといっていいだろう。

 

✔️ 「常識」は新たな価値を生まない

情報革命によって我々が拠って立つ前提条件が大きく変わるときには、むしろ常識に囚われない

“素人”の方が強みを発揮する。玄人には業界の常識を疑うことができないが、素人はそうした

モノの見方から自由になれるからだ。

「小売業には小売業の確立されたやり方がある。消費者を知っているのは我々だ。

ウェブサイトに商品を並べたからといって売れるわけではない」というのが玄人のモノの

見方だろう。これに対して、ベゾスは当時次のように世界を見ていた。

「世の中にはまだ発明されていないものがたくさんある。今後新しく起きることもたくさんある。

インターネットがいかに大きな影響をもたらすか、まだ全然わかっていない。

だからすべては始まったばかりなのだ」

 

この「まだ全然わかっていない」というモノの見方こそが、ベゾスに新しい書店のあり方を

発見させたのだ。「常識」とは「普遍的な知識」「変わらないモノ」のことを意味する。

このため、常識に染まった玄人には、世の中の変化が見えなくなる。

固定されたモノの見方から外に出ることができなくなるのだ。

ベゾスは素人であったがゆえに、業界の常識から自由になれた。

それによって、エスキモーを発見することができたのである。

情報革命後の世界においては、こうしたユーザーの無意識の世界に訴え、驚きや快感をもたらす

方法の発見こそが価値を生み出す。

すでに公共財になってしまった「常識」が、新たな価値を生むことはないのだ。

このため、ベゾスはグーグルの創業者と同じように徹底した秘密主義をとる。

 

✔️ アマゾンとユニクロは、なぜ成功できたのか

小売業は、絶えず試行錯誤が行われていて、「考えられる工夫はすべてやり尽くした」と

思っている人が多い業界のひとつだ。

それにも関わらず、アマゾンやユニクロ(ファーストリティリング)のように突如急成長する企業が

出てくるのはなぜだろうか。

それは、こうした企業の創業者が、「すべてやり尽くした」という業界の常識を捨てることが

できたからだ。

ここで、業界の常識から自由になるためのエクササイズに取り組んでみてもらおう。

 

Exercise  4-2

次の会社が急成長することを可能にした「成長ドライバー」を考えてみてください。

また、各社が自社の売上高をどのように定義しているのか(どのようなファクターに分解して

いるか)について考えてみましょう。

  ①   アマゾン・ドット・コム

  ②   ファーストリティリング(ユニクロ)

 

ちなみに、一般的な小売業の常識に則って考えると、成長ドライバーと売上高の定義は下記の

ようなものになるでしょう。

右記の2社は、これとは少し違ったモノの見方をしています。

 

まず、アマゾンだが、一般的な小売業のモノの見方に沿って考えれば、取り扱い商品の品揃えを

圧倒的に増やすことで売上高を上げてきたことが、成長ドライバーとして挙げられるだろう。

その際、リアル店舗を持たないことでコスト構造を軽くし、ロングテールといわれる多品種

少量型の商品群を品揃えできるようになったこと、その一方でフルフィルメントセンター(倉庫)に

投資し、多様な在庫の品揃えに対応できるようにしたことが成功要因といえる。

また、違った角度から見てみると、「この本を買った人は、他のこんな本も買っています」という

推奨機能を提供することで、1冊本を買いに来た人に、2冊、3冊とクロスセルをすることも、

売上増加のドライバーになっていることがわかる。

 

✔️ アパレルとは「買いたくない服が並ぶ店」だった

次に、ファーストリティリングの成長ドライバーについて考えてみよう。

その鍵は「ファーストリティリング」という社名の中にある。

あなたはなぜ柳井社長が「ファースト」という名前を自分の会社につけたのかご存知だろうか。

それはファーストフードに由来している。

柳井さんは「ファーストフードは食材の高速加工ビジネスだが、自分たちは服飾の高速加工

ビジネスである」といういい方をしている。つまり、高速加工に意味があるのだ。

当時アパレル業界では商品を企画してから店頭の棚に並べるまでに、6カ月近い時間をかけていた。

6カ月も前に企画した服が売れるか売れないかは、ほとんどクジを引くのと同じようなものだ。

そのため、たまたま流行った服は、すぐに売り切れてしまう。

追加で生産しようにも、すぐにはできないので欠品状態になる。

逆に流行らなかった服はいつまでも棚を占領し続ける。

その結果、「買いたくない服が並ぶ店」になってしまうのだ。

そして、シーズンが終わると、売れ残った服を大量に捨てることになる。

 

 

この続きは、次回に。

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