お問い合せ

人を動かす経営 松下幸之助 ㉜

自分自身への説得「運が強い」と信じさせる

 

説得というものは、他人に対するものばかりとは限らない。

自分自身に対して、説得することが必要な場合もある。

自分の心を励まして、勇気をふるいおこさなければならない場合もあろうし、また自分の心をおさえて、

しんぼうしなければならない場合もあろう。いろいろな場合があろうと思う。

そうした際には、自分自身への説得が必要になってくるわけである。

自分自身であれこれ考え、自問自答をくり返し、そうして自分で納得できる考え方、自分なりに割り

切れる考え方、適切な考え方というものをさがし出し、それでよしとする。

私がこれまで自分自身への説得をいろいろしてきた中で、今でも大切ではないかと思うことの一つは、

自分は運が強いと自分に言い聞かせることである。本当は強いか弱いかわからない。

しかし、それを強いと考える。自分自身を説得して、強いと信じさせるのである。

そういうことが、私は非常に大事ではないかと思う。私自身そう信じてきたのである。

客観的に見た場合、私のこれまでの歩みのすべての面において私は運が強かったとはいえないと思う。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

これは、逆の見方もできるわけである。すなわち、海へ落ちて助かったのも、車と衝突してケガが

なかったのも、また病気にかかって死ななかったのも、悪くとろうと思えばとれる。

つまり、海へ落ちるなどとは運が悪い、車と衝突するなどとは運が悪い、病気にかかったのも運が

悪い。自分はそういうように、運が悪いのだ、このように、逆の見方もできる。

世間には、こういう見方をする姿も少なくないのではあるまいか。

しかし、私は、そういう見方はとらなかった。むしろ運が強いのだ、自分は死ぬような場合でも死な

ないほどの強い運を持っているのだ、というように考えた。これは自分自身への説得である。

だから、小さいころの丁稚奉公にしても、その中でいろいろと実世間の事、商売のことを学ぶことが

できた。それが、自分で独立して商売を始めてからもずいぶんと役に立った。

こういう見方をすれば、運が強かったともいえよう。そして、私はそのように信じたわけである。

そう信じることができれば、心の中に非常に強い支えができてくる。

仕事の上でも何でも、何か困難な問題に直面しても、自分は運が強いのだから、これはなんとか乗り

切れるだろう。さらによい状態を生み出すことができるだろう、というような信念というか、自信と

いうか、強い考え方が生まれてきたのである。

そして、そうしたものがあったおかげで、さまざまな困難にも、心乱すことなく、勇気がくじける

こともなく、なんとか今日まで歩んでこられたわけである。

 

 

 

この続きは、次回に。

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