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IoTビジネス入門 ㉑

■   モノの「所有」から「利用」への変化

 

では、具体的にIoTでのビジネスモデルについて、考えていきましょう。

IoT社会となって、専門家の間でよく言われるようになった言葉が、「サブスクリプション

モデル」と「リカーリングモデル」です。

なんだか聞きなれない言葉ですよね。

どちらも共通して言えるのは、「毎月払い(あるいは一定間隔での支払い)であることです。

 

例えば、写真加工をする、パソコン向けソフトに、「Photo Shop」という製品があります。

この製品、以前は買い切りでした。1つのソフトウェアが1本あたり何万円という感じです。

インターネットのホームページを制作しようと思うと、「Photo Shop」と「I11ustraator」と

「Dreamweaver」という3つのソフトを使うことが多いのですが、これらのソフトをまとめて

買うと多少割安にはなるものの数十万円はしたものです。

しかし最近は、ソフトの買い切りではなく、毎月数千円を支払えば、そのソフトを利用でき、

しかも新しい製品が出ても毎月支払っている人は無償でアップグレードができるように変わったのです。

私が本書の執筆で利用している「Microsoft Word」も毎月払いで、常に最新のソフトを利用する

ことができます。

このように、一定期間ソフトウェアを利用する権利を得るため毎月支払っていくようなモデルを

「サブスクリプションモデル」と呼びます。

 

また、電気代やガス代のように、金額は固定ではないのだけれども、将来にわたって一定の利用

金額の支払いが毎月期待できるような、安定した収益を得られるビジネスモデルを「リカーリング

モデル(繰り延べ収益管理)」と呼びます。

これらは、将来の収益が継続的に得られそうなビジネスモデルとなるので売り上げが安定的になるのが

特徴です。実際は、収入のある周期は毎月と決まっているわけではなく、それぞれのビジネスに

よって決めていくのが一般的です。

 

では、なぜこのような考え方が注目を集めているのでしょう。

現代は「モノが売れない時代」といわれています。

実際、家ナカを見ても、テレビや冷蔵庫といったモノは一度買うと簡単には壊れないので買い換える

周期はどんどん長くなります。

こういった背景もあって、「一度買ったら長く使ってもらいたい。使いこなすことで愛着を湧かせて

欲しい。そのために、毎月お金をもらって、決めの細かいサービスなどの付加価値をモノの上に

付け加えたい」という思惑が働くのです。

また毎月払いになることで、買い替え時の初期費用がぐっと下がることも、買い手からすれば

重要です。

今後は、十何万円もするモノを一括で買うのではなく、月額数千円で利用するタイプのモノも

出てくるでしょう。つまり、モノは「所有」するものではなく、「利用」するものへと変化して

きているといえるのです。

この流れは、先ほど述べた「継続的ビジネスモデル」と非常に親和性が高いこともあって、この

モデルへの移行がどんどん進んできています。

 

■   急速に進むパーソナライゼーション

 

インターネットにつながった、モノを「利用」する社会においては、「パーソナライゼーション」も

重要です。

パーソナライゼーションとは、モノ一つひとつについて状態を把握し、生活者が持っているモノで

あれば生活者も含めて、企業が使うモノであればそれを利用するヒトを含めた〝個別対応〟を行う

ことです。

これまでは「パーソナライズ」といっても、ある一定の嗜好に基づいた「グループ」向けにサービスを

提供してきたのですが、今後は1人ひとりの「個人」に寄り添うことができるようになるところが

新しいのです。

 

例えば、Facebookを利用すると、人によってタイムラインを「興味のありそうなものを優先」にする

こともできれば、「すべて最新投稿順に表示」にすることもできます。

他にも、広告の表示設定やコンテンツの共有範囲など、数え切れない設定項目があります。

Facebookは、それらの設定項目に従って、情報を個人ごとに出しわけているのです。

しかも、Facebookの同時アクセス数は10億人を超えている状態なので、この瞬間もFacebookの

システムは、10億通りの出し分けを行っていることになります。

 

少し前の情報システムでは、こういった細かな設定項目を管理するには、相当なマシンパワーと

プログラム量が必要で、制御しきれないことが多かったのですが、最近ではこういった「パーソナ

ライズ」情報を制御することが、クラウドの世界では当たり前になってきているのです。

 

さらに、ヒトの情報をパーソナライズするのと同時に、IoTでは、モノの状態もクラウド上に個別に

保持することが可能となります。

その結果、モノおよび、そのモノを利用するヒトの両方について、クラウド上で個別に管理することが

主流になります。

IoTのサービスを進める際、こういった個別ステータスを取得・管理するクラウドが必須となるのです。

しかし、それをゼロからつくることはかなり困難です。

そこで、最近では、「IoTに必要な個別管理の仕組みはあらかじめ準備します」という、Amazon AWS

IoTやMicrosoft Azure  IoTといった、IoT向けクラウドサービスが出現しています。

 

 

 

この続きは、次回に。

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