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IoTビジネス入門 ㉓

■   家ナカでデジタラゼーションを考える

 

では、どのようにデジタライゼーションを果たせば良いのか、具体的にイメージしてみましょう。

あなたは家ナカの家電メーカーで、デジタライゼーションを果たそうとする企業の経営者です。

さあ、どういうことをやりますか?

 

まず、クラウドサービスを立ち上げる必要があります。

インターネット上に巨大なデータを持ち、家電がセンシングしたデータを集めるのです。

センサーとなるモノは家電そのものであったり、人感センサーであったりさまざまです。

では、すべての家ナカ家電の情報を集められたとしたら、あなたは、いったいどういう価値を

提案しますか。

空調も、カギも、洗濯機も、冷蔵庫も、クルマも、電灯も、セキュリティカメラも、火災探知機も、

何もかもが、住人の状態を自分のクラウドに伝えてくるとしましょう。

 

まず、一番初めに思いつくのは、第1部で説明した「省エネ」でしょう。

あなたの会社は、HEMEを使って電力の供給状態や使用状況も把握することができるので、無駄な

電気は自動的に利用を控え、必要な時には住人の在宅状態に関わらず利用する、ということを人口

知能を使ってコントロールします。

さらに、すべてがつながっているので、ヒトがどの部屋にいるか、外出中なのか、どういうことを

やりたいと思っているか、なども検知できるようになります。

これによってヒトが特に何か指示をすることなく、家ナカ家電自体が気を回せるようになるので、

これまでにはない快適な暮らしを提供することができます。

さらに、賢い火災報知器を使っているヒトには、これまでの火災報知器を使っているヒトよりも

保険料が安くなる、といった二次的なメリットも提供できます。

冷蔵庫は、冷やすという機能はモノ側で担当するとしても、中には保存されているドレッシングや

マヨネーズの残量はクラウドで管理され、なくなりかけるとECサイトで自動的に発注されます。

商品を送るタイミングを在宅時に合わせるため。スマートロックが住人の家にいるタイミングを

学習し、あなたのクラウドサービスでその情報を補完します。

こうやって、家ナカはあなたの会社のクラウド上で管理され、モノはあなたの人口知能を通して

コントロールされます。

さらに、すべての家電は少額の月額費用で利用されるようになります。

こうして、圧倒的な利便性と省エネ等によるコスト削減効果から、利用者は増えていくとことに

なるでしょう。すると、クラウドサービスを展開する他企業が、「急速に成長したあなたの会社の

クラウドサービスに接続したい」と、どんどん賛同してくるでしょう。

その結果、さらなる付加価値があなたのサービスには追加されるのです。

その時、競合他社となる家電メーカーはどうなるでしょうか。

 

たとえば冷蔵庫であれば「冷やすだけ」「残量を計測するだけ」という機能上の差別化はほとんど

なくなります。その結果、冷蔵庫は圧倒的な利用者を持つ、競合他社であるはずの、あなたのクラウドに

接続していくことになります。なぜなら、そうするしか生活者の利便性を確保できなくなるからです。

 

こんなことが起きたら、家電メーカーの多くがその主導権をあなたの会社に奪われることがイメージ

できるのではないでしょうか。

こうなると、もうあなたの会社は家電製品を製造する必要すらなくなります。

モノ自体の機能面の差別化を追う企業の大半は、価格面の差別化しかできなくなるレベルまでコモ

ディティー化していき、デジタライゼーションを果たした、ひとつも家電製品を持っていないあなたの

会社は、ヒトは生活をゆだね、月額利用料金を支払い続けることになります。

このように、IoTを包含したデジタライゼーションによって、あなたの会社は、これまで考えもしなかった

変革を起こすのです。

 

もちろん、現実ではこんなに簡単にいかないので、「たら、れば」の話であることをご容赦ください。

しかし実際に、この立ち位置を狙う企業は、グローバルレベルでは相当数存在するのです。

 

 

この続きは、次回に。

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