お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ⑪

・危機の際に持っておくべき資産

 

危機が起きた際には、どのような資産を持っておくべきか。

私は米ドルをたくさん持っている。

米国は世界で最も大きな借金を抱えており、爆発寸前であるとすでに述べた。

しかも状況は日々悪化している。ではなぜ米ドルを持つのか。

 

米ドルは危機が起きると高くなる。

危機がどれほどひどいのかに応じて、米ドルは高値になり、過大評価される

だろう。人々は米ドルを所有することを切望するはずだ。

その時点で、私は米ドルを売って何か別のものに投資する。

 

危機の最初の段階で、金はしばしば下落する。

資金不足に陥った人々が金を売って、現金を手に入れる必要があるからだ。

多分、私は米ドルを売って金や銀を買うだろう。

もちろん状況次第で、打ち手は変わるはずだ。

 

危機の初期段階で金が下がったとしても、すぐに上がる。

歴史を通じて人々は自分の国の経済が悪化し、通貨が下落すると、次に金と

銀を買おうとするものだ。

 

私も以前から金と銀を所有しており、しばらく前に少し買い増した。

金や銀が下落するタイミングがあれば、もっと買い増すだろう。

すべての危機において、金と銀の価格はいったん下がったとしても、すぐに

上がるからだ。

 

それでも他人の話をうのみにしないことだ。

自分のやり方で投資したほうがいい。

私は金と銀、そしてたくさんの米ドルを所有している。

それは健全だからではなく、多くの人がそれを健全だと思うからだ。

 

人々は、危機の際に、英ポンドやユーロなどの他通貨に比べて、米ドルが

優れていると思うものだ。

実際はそうでなくても、そのように考えて行動する。

 

・企業は何をすべきなのか

 

危機に対応するために、企業は何をすべきなのか。

まず負債を劇的に削減すべきだ。

同時に顧客=取引先に注意する必要がある。

借金の多い取引先は、危機の際にトラブルに陥り、代金を回収できなくなる

リスクが高くなる。したがって、企業は自社の負債だけでなく、借入金が多い

取引先にも注意する必要がある。

企業は顧客を排除したくないだろうが、借金が多い顧客は短期間で問題が

起きるリスクがある。

いずれにせよ多くの債務を抱えている企業は問題を抱えているので、それに

対処し、準備する必要がある。

危機が来ると顧客企業のいくつかは破産し、あなたが何も悪いことをして

いなくても、あなたのビジネスに影響する。

 

さらに自分の会社が得意としていて、強みがあるビジネスに留まる必要がある。

危機の際はビジネスを多角化してはならない。

多くの企業は、新しいビジネスに進出し、多角化していないと、スピード感が

ないと批判されがちだ。

しかし自分たちが知らないことをしようとすると、多くの場合、よりたくさんの

問題が起きる。

事業を多様化させている会社は、より多くのトラブルに巻き込まれやすい。

それは企業の経営を間違いなく悪化させるはずだ。

 

したがって、特に困難な時期は、自分が知っていることにフォーカスし、

自社の借金を減らし、多くの借金を抱えている企業と取引しないように

気をつけるべきだ。

不必要な資産があるなら売却して、手元資産を増やしておくことも有効な

手段になる。

 

流動性を高めて、いざという時に備えておくことが必要だ。

不必要なものを売り、借金を減らす。

そしてあなたが最もよく知っている事業に集中するならば、困難を乗り

越えられる可能性は高くなる。

 

・危機への備えをしておこう

 

平時なら分からなくても、危機が来たら、あなたがその時のために準備が

できていたかどうかがわかるだろう。

 

2008年にリーマン・ショックが起きた時、ウォール街のすべての投資銀行は

確信していた。次のどの会社が崩壊するかを。

 

私もシティグループだと分かっていた。

サププライムローンに入れ込んでいたからだ。

その後のシティグループは、世界最大級の損失を出し、米政府から巨額の

公的資金の注入を受け、不良債権も肩代わりしてもらうことになった。

 

ファニー・メイ(米連邦住宅抵当公庫)もそうだ。

私はファニー・メイが崩壊すると確信していた。

だから私はテレビでも、問題が注目を集めるかなり前から危機が起きると

明言していた。私はリーマン・ショックのような危機を予見しており、

準備もしていた。もちろん今回の危機に向けた準備もしてきた。

 

私はリーマン・ショックの前年の2007年に米国からシンガポールに引っ越した。

当時、危機が起きるのは近いと考えて、シティグループを空売りし、ファニー・

メイも空売りしていた。

 

シンガポールに引っ越した頃、記者会見であるジャーナリストからこんな

質問を受けた。

「あなたがシティグループや投資銀行を空売りしている理由を教えてください」。

 

私はすでに述べたような理由で危機が来るだろうと説明した。

しかしシンガポール政府はその時点で、それらの企業の株をたくさん買っていた。

「シティバンクや投資銀行株への投資で、シンガポールは多くのお金を

失うことになるので、私は悲しんでいる」。

私は記者会見で、こう話した。

しかし(シンガポール政府の影響が強い)現地の新聞は、「ジム・ロジャース氏が

シンガポールに住んでいるのは幸せなことだ」といった当たり障りのない

記事しか掲載しなかった。

その後、2008年にリーマン・ショックが起きて、全てが崩壊した。

それでも「ジム・ロジャースはやはり正しかった。私たちは間違っていた」と

行った記事をシンガポールのメディアは書かなかった。

誰も私の言うことを信じていなかったのだ。

 

 

 

この続きは、次回に。

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