お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ㊴

・誕生する巨大なビジネス

 

これはマリファナに巨大なビジネスチャンスが存在することを意味する。

 

現在、いくつかの酒類メーカーは、すでにマリファナ事業に着手し始めて

いる。カナダでは大手企業も参入している。

「コロナ」ビールで知られる米酒類メーカー大手のコンステレーション・

ブランズは、カナダでマリファナを栽培加工する企業の株式を約50億

カナダドル(約4200億円)を投じて取得した。

カナダの医療用大麻大手のティルレイは、ビール世界最大手であるベルギーの

アンハイザー・ブッシュ・インベブと、医療用大麻入り飲料の開発で

提携している。

 

最近はタバコ会社もマリファナに積極的になっている。

「マルボロ」などで知られる米タバコ大手のアルトリアは、カナダの

マリファナ企業に大規模な投資をしている。

タバコは健康に悪いと集中砲火を浴びているので、マリファナ事業に活路を

見出そうとしているのだ。

マリファナ関連のスタートアップも次々に株式を上場しており、次の成長

業界として期待が高まっている。

 

カジノとマリファナはどちらが危険なのか。

 

私はギャンブルをしないのでよく分からない。しかしカジノは、胴元が常に

儲かるビジネスだ。無料の食べ物と無料のエンターテイメントを備えた

大きなホテル施設を運営する費用を誰が払うのか。

それはギャンブルをする人たちだ。

一時的にはギャンブルで勝っても、勝てば熱中することになるので、それは

良くない。もちろん政府にとっては、税金が入ってくるので、カジノは

魅力的かもしれない。

 

米国の多くの州がマリファナを好むのは、カジノと同じように税金収入が

期待できるからだ。米国ではかつて禁酒法があり、お酒は違法だった。

しかし今は合法であり、政府は酒類に課税することで、多くの収入を得ている。

マリファナにも課税することで、政府は多くの収入を得ることができるだろう。

 

ブロックチェーンがもたらす破壊

 

「ブロックチェーン」という技術は革命的なものだ。

ブロックチェーンは、私たちが知っているすべてのものを変えるだろう。

そして人間が仕事を失うことになると多くの人は考える。だが、本当に

そうなのか。

 

コンピューターは多くの人の仕事を奪ったが、同時に新しい機会と新しい

仕事を生み出した。プログラマーという職業が生まれ、ソフトウエアという

巨大な産業も勃興した。ブロックチェーンにより、数百万人の銀行員が職を

失うことになるだろう。多くの銀行は消滅する可能性があり、今後、何が

起こるか分からない。

私たちの子供たちは、おそらく大人になった時に銀行に行くことはないだろう。

変化するものがたくさんある。ブロックチェーンは、多くの人を豊かに

するのと同時に多くの人から仕事を奪うことになる。

しかし、あなた自身がブロックチェーンとは何であるか理解できない場合は、

私の言葉に耳を傾けない方がいい。私自身は、ブロックチェーン技術を使う

暗号通貨に投資したことはない。暗号通貨の価格はずっと乱高下を繰り返して

いるが、すでに消滅したものも少なくない。最終的に、すべての暗号通貨が

消えていく可能性すらあると私は思っている。

 

歴史を振り返るならば、貝殻がお金だった時代もある。

自分たちが望むものなら何でもお金にすることができた。

今のように各国の中央銀行が印刷するのではなく、20世紀までは、多くの

銀行が独自の紙幣を印刷していた。しかし、お金の準備高を超えた銀行券を

発行することは、インフレにつながるリスクがある。

そこで英国では当時最も重要な銀行であった英イングランド銀行にだけ、

銀行券を発行できる独占的な権利が与えられることになった。

こうして市中の銀行の紙幣発行権は次第になくなっていき、イングランドと

ウェールズにおいては、1921年にそのルールが完全に施行されるように

なった。

今、暗号通貨を扱っている人たちは、自分たちは政府よりも賢いと思って

いる。しかし、政府には銃がある。政府が暗号通貨を扱う企業に対して、

それを使用することを禁止とすると言ったらどうなるのか。

そうなることも考えられないわけではない。

暗号通貨の世界では、すべてのお金がコンピューターネットワーク上で

保管・管理されている。

中国では、中央銀行さえも、デジタル通貨を発行しようとしている。

中国ではキャッシュレス化が進み、タクシーを使う際に現金で支払うことさえ

難しくなっている。現金は間違いなく、消えていくだろう。

 

中国政府はデジタル通貨が大好きだ。

一人ひとりの国民が何にいくら使っているのかを、すべて把握できるように

なる。「電話をかけすぎている」「コーヒーを飲みすぎている」「クラブに

行きすぎている」と指摘できるような世界だ。

お金を使わずに生活するのは不可能なので、中国政府は人々の行動のすべてを

知るようになるだろう。私はそのような社会が好きではないが、中国政府は

好みそうだ。それは、すべてのお金がコンピューター上にある場合に実現できる。

しかし、それは政府のデジタル通貨であり、民間の暗号通貨ではない。

交換可能であっても、ビットコインなどとは違い、政府のお金だ。

暗号通貨を扱う民間企業は、政府のデジタル通貨を使うほかなくなっても、

警察力を持つ政府の言うことを聞くしかない。

 

 

 

この続きは、次回に。

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