お問い合せ

チェンジ・リーダーの条件⑧

○   利益の目標

これら諸々の目標を徹底的に検討し、設定して、初めて企業は「利益がどれだけ必要か問いに取り組むことができるようになる。

これらの目標はいずれも、その達成には大きなリスクが伴う。

努力すなわち費用が必要となる。したがって、目標を達成するうえで利益が必要となってくる。

利益とは、企業にとって存続の条件である。

利益とは、未来の費用、事業を続けるための費用である。

目標を実現するうえで必要な利益をあげている企業は、存続の手段をもっている企業である。

これに対し、基本的な目標を実現するうえで必要となる利益に欠ける企業は、限界的かつ脆弱な企業である。

もちろん利益計画の作成は必要である。しかしそれは、無意味な常套語となっている利益の極大についての計画ではなく、必要最小限の利益についしての計画でなければならない。ただし、この必要な最小限の利益というものは、実際にあげている利益はもちろんのこと、目標としている利益の極大のための額をも上回る場合が多いのである。

 

3章 事業を定義する

 

○   もはや前提が時代遅れだ。

  1. ダウンサイジング、TQC、経済的付加価値分析(EVA)、ベンチマーキングは、全て方法に関する手法である。「何を」ではなく、「いかに」行うかについての手法である。
  2. アウトソーシングとリエンジニアリング
  3. マネジメント—-これからは「何を」行うかが問題となる。

これまで事業の定義としてきたものが、現実にそぐわなくなったためである。

何を行い、何を行わないかを決め、何を意味する成果とするかを規定すべき前提が、時代遅れとなったためである。すなわち、

第一に、環境としての市場である。顧客や競争相手の価値観と行動である。

第二に、自らの目的、使命である。

第三に、自らの強みと弱みである。

これらが、私が事業の定義とよぶものを構成する。

 

○   事業の定義

事業の定義は、三つの要素からなる。

第一は、組織をとりまく環境である。すなわち、社会とその構造、市場と顧客、そして技術の動向についての前提である。

第二は、組織の使命すなわち目的である。

第三は、そのような使命を達成するために必要な強みについての前提である。

 

第一の環境についての前提は、組織が何によって対価を得るかを明らかにする。

第二の使命についての前提は、組織が何を意義ある成果とするかを明らかにする。

経済や社会に対し、いかに貢献するつもりかを明らかにする。

第三の自らの強みについての前提は、リーダーシップを維持していくためには、いかなる分野で抜きん出なければならないかを明らかにする。

言うまでもなく、これらは一見やさしそうに見える。しかし、そのような明瞭かつ一貫性のある有効な事業定義にたどりつくには、時間をかけた作業と思考と試行錯誤を必要とする。だが、組織が成功するには、必ずこの定義を行わなければならない。しかも、事業の定義が有効であるためには、四つの条件を満たさなければならない。

 

○   四つの条件

第一に、環境、使命、強みについての前提が、それぞれ現実に合致しなければならない。

第二に、事業の定義に関わる三つの前提は、それぞれがたがいに合致していなければならない。

第三に、事業の定義は、組織全体に周知徹底しなければならない。

第四に、事業の定義は、たえず検証していかなければならない。

定義は、石板に刻んだ碑文ではない。仮説にすぎない。

社会、市場、顧客、技術という、つねに変化してやまないものについての仮説である。したがって、自己変革の能力そのものを、

定義のなかに組み入れておかなければならない。

 

○   定義は必ず陳腐化する

具体的な予防策は、二つしかない。しかし、その二つを一貫して行うならば、水ももらさぬ体制のもとに、事業とその定義を急速に変革していくことができる。

第一の予防策は、私が体系的廃棄とよんでいるものである。

第二の予防策は、外で起こっていること、特に顧客でない人たち(ノンカスタマー)について知ることである。

組織は、つねに市場志向でなければならない。

 

○   問題を早期に発見する

問題の発見を早期に発見するには、状況の変化に注意しなければならない。

事業の定義は、組織が目標を達成したときに陳腐化する。

目標が達成されるときには、お祝いをすべきときではなく、定義を考え直すべきときである。

成長はもちろん、健全性を維持するためにも、自らの環境と、使命と、強みについて、繰り返し自問自答しなければならない。

 

○   予期せぬ成功と失敗

事業の定義が有効でなくなったことを示す兆候は二つある。

一つは、自らのものであれ、競争相手のものであれ、予期せぬ成功である。

もう一つは、同じく自らのものであれ、競争相手のものであれ、予期せぬ失敗である。

予期せぬ失敗は、予期せぬ成功と同じように、事業の定期の陳腐化を示唆する重大な兆候である。

60歳を過ぎてからの軽い心臓発作と同じように、真剣に受け止めなければならない。

 

○   定義を見直す

事業の定義の見直しに必要なのは、天才ではなく、勤勉さである。

賢さではなく、問題意識である。そもそもCEOとはそのための存在である。

事実、事業の定義の変革に成功したCEOは多い。

 

この続きは、次回に。

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