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チェンジ・リーダーの条件⑨

3章   NPOは企業に何を教えるか

 

○ もっとも進んだマネジメント

すでにアメリカでは、ガールスカウト、赤十字、教会などの非営利組織(NPO)が、マネジメントの面でリードしている。戦略や取締役会のあり方について、NPOは企業の世界では口先に終わっていることを実行している。

知識労働者の動機づけや生産性という重要な問題についても、企業が取り入れるべき考え方や制度を生み出し、パイオニアになっている。

あまり知られていないが、今日アメリカでもっとも多くの人たちが働いている組織がNPOである。

成人の二人にひとり、つまり8000万人強が、平均週5時間、ボランティアとして働いている。これは、フルタイムに換算して1000万人に相当する。

彼らボランティアのすべてを有給と仮定すると、最低賃金で計算しても、その総額はは年間1500億円ドル、GNPの5%に達する。しかも、彼らボランティアの仕事の中身が急速に変わりつつある。

 

○ 組織の使命からスタートする

今日、NPOのほとんどが、まさに自分たちには利益という基準がないからこそ、企業以上にマネジメントが必要なことを認識している。もちろん、NPOは善をなすことに身を捧げる。しかし彼らは、よき意図が、組織、リーダーシップ、責任、仕事、成果に代わるものではないことを承知している。

これらのことのために、マネジメントが必要であることを認識している。

そして、組織のマネジメントは組織の使命からスタートすべきことを知っている。

企業がNPOから学ぶべきことの第一が、使命をもつことである。

使命をもつことによって、初めて行動に焦点を合わせることができる。

目標の達成に必要な戦略も明らかにすることができる。

規律をもたらすこともできる。そうすることによってのみ、組織特に大組織が陥る進行性の病、すなわち、限られた資源を生産的な活動に集中せず、面白そうなことや儲かりそうなことに分散させる過ちを防ぐことができる。

一流のNPOは、使命すなわち目的の定義に力をそそぐ。

よき意図に関わる美辞麗句を避け、ボランティアや有給スタッフの仕事が具体的にわかるよう目標わ定め、そこに焦点を合わせる。

 

○ 成果に焦点を合わせる

一流のNPOは、経営環境、コミュニティ、潜在顧客からスタートする。

多くの企業に見られるように、内部の世界、すなわち組織や利益からスタートすることはない。

自分たちが得るべきものからではなく、外の世界つまり市場にもたらすべきもの、すなわち使命からスタートしているところにある。

使命を明らかにすることによって、伝統にこだわることなく、革新的なアイデアを実行に移せるようになっている。

 

○ 取締役会の手本とすべき理事会

さらにNPOの多くが、企業ではいまだ稀有というべきものをもっている。すなわち、取締役会に相当するものとしての機能する理事会である。

さらに稀なものをもっている。すなわち、この理事会に対して責任を負い、理事会内の小委員会によってその仕事ぶりが評価されるCEOである。

加えて、盲一つ稀なものをもっている。すなわち、事前に設定された基準に照らして、自らの仕事ぶりを評価する理事会である。したがって、企業がNPOから学ぶべき第二のものが、取締役会のあり方である。あるべき取締役会の姿を知るには、他の上場企業を見るよりもNPOを見たほうがよい。

プロのCEOを擁するようになっても、NPOの理事会のほとんどは、企業の取締役会のように無力化されることがなかった。

CEOがどれほどそれを望もうと、理事会がCEOの言いなりになることはなかった。その一つの原因は資金である。NPOの理事の多くは自ら多額の寄付をしており、寄付してくれる者を連れてくる。もう一つの原因は、理事の多くが、NPOの使命に個人的に献身していることである。さらにもう一つの原因は、企業の社外取締役と違い、NPOの理事は、自身がボランティアとして長年奉仕し、NPOの仕事に詳しいことである。

 

この続きは、次回に。

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