お問い合せ

チェンジ・リーダーの条件⑱

○   富を創出するための情報

事業体として、すなわち富を創出するためにマネジメントしているのではない。

事業体として、すなわち富を創出するためにマネジメントしている。

ここにおいて、事業上の意思決定のための情報が必要となる。すなわち、四つの種類の情報が道具として必要となる。

基礎情報、生産性情報、卓越性情報、そしてもっとも希少な資源についての情報、すなわち資金情報と人材情報である。

 

○   基礎情報

基礎情報とは、経営の判断道具としての情報である。

キャッシュフローや流動性、さらには、ディーラーの新車在庫台数と販売台数の比、収益と社債費の比、売掛金(半年超と総額)と売上高の比などである。

 

○   生産性情報

次の情報は、資源の生産性についてたのものである。

労働の生産性だけでは生産性について十分な情報を得たことにはならない。

生産要素すべての生産性に関する情報が必要である。

これが最近、付加価値分析(EVA)が広く使われるようになった理由である。

EVAは、コストに付加した価値を測定することによって、生産要素の生産性を測定する。

EVA自体は、ある製品ないしはサービスが、なぜ価値を付加しなかったか、したがって何をしなければならないかについては教えていない。

しかしそれは、何を行うべきことがあるか、何を明らかにしなければならないかを教える。

いかなる製品、サービス、活動、作業の生産性が高く、価値をもたらしているかを教える。

そこで「それらの成功から何がわかるか」を考えることができるようになる。

生産性についての情報を得るために最近使われるようになったもう一つの手法が、ベンチマーキングである。

ベンチマーキングとは、自社の仕事を同一業界における他社の最高の仕事と比較することである。

さらには、全産業界における最高の仕事と比較することである。

ベンチマークは、ある組織にできることは他の組織にもできるはずであるとの前提に立つ。

さらにそれは、少なくともリーダー企業と同じ水準の仕事をしなければ、競争優位は維持できないとの前提に立つ。

生産要素すべての生産性を測定し管理するための道具が、EVAとベンチマークである。

 

○   卓越性情報

第三の情報は、自社の強み(コア・コンピタンス)に関する情報である。

リーダーの地位を得るには、他社にはできないこと、あるいは少なくとも、他社にはかろうじてしかできないことが、容易にできなければならない。

リーダー企業となるには、市場や顧客の価値と、生産者や供給者としての自らの特別の能力とを、結合する能力が必要である。

しかし、リーダーの地位に必要な強みとして、

「何をすでにもっているか」「あるいは何を手に入れなければならないかを、いかにして知るか」「自らの強みが、向上しているか低下しているかを、いかにして知るか」「自らの強みは、現在でも適切か、いかなる変化が必要かを、いかにして知るか」

強みを知るための方法については、自社および競争相手の仕事ぶりを丁寧にフォローし、予期せぬ成功を見つけ、さらには、当然成功するはずだった領域での予期せぬ失敗を見つけることである。

予期せぬ成功は、市場が評価し、支払いを行ってくれるものを明らかにする。

それは、リーダーの地位を得るうえで必要な優位性の存在を教える。

これらの分析は、機会の存在をいち早く教える。

強みは、企業によって異なる。

それはいわば企業の個性である。しかし、あらゆる企業、さらには、あらゆる種類の組織がもつべき共通の強みというものがある。

すなわちイノベーションの能力である。

あらゆる組織が、イノベーションに関わる自らの業績について記録し、評価するためのシステムをもたなければならない。

一流の医薬品メーカーは、すべてそのようなシステムをもっている。

それらのシステムは、自社の仕事ぶりからはスタートしない。

一定期間における業界全体のイノベーションの実績を調べる。

そして、「それらのイノベーションのうち、本当に成功したものはどれか」「それらのうち、わが社のものはいくつか」を調べる。

次に、「わが社の実績は、当初の目標に見合っていたか」「市場の方向性に合致していたか」「市場地位に見合っていたか」「研究開発費に見合っていたか」を分析する。

さらには、「わが社が成功したイノベーションは、成長力や機会が最大の分野におけるものだったか」「逸してしまった重要なイノベーションの機会は、どのくらいあったか」「なぜそれらの機会を逸したか」「気がつかなかったからか、気づいていながら手をつけなかったからか。

本気で取り組まなかったからか」を検討する。そして最後に、「わが社は、商品化にどのくらい成功したか」を問う。

もちろん、これらの問いの多くは、客観的な測定ではなく、主観的な評価を求めるものである。しかも、答えを出すというよりも、新たに問題を提起するものである。正しい問題を提起するためのものである。

 

この続きは、次回に。

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