日本型イノベーションのすすめ-⑤
第三章 「アメリカ型」への盲従は毒であり弊害
1欧米におけるイノベーションの議論の変換
シュンペーターの「新結合の遂行」
現状否定を志向した「入口での非連続性」
ドラッカーの「予期せぬ成功と失敗」
クリステンセンの「創発的戦略策定プロセス」
2 日本的固有文脈のなかで再構築するには
第四章 日本型イノベーションの新たな視座
1「こと」的志向性から変える。
2 トヨタvs IBM
3 『YouTube』vs『ニコニコ動画』
4 『セカンドライフ』vs『電脳コイル』
5 三つの解題の総括
第五章 日本型イノベーション技法の基礎
1 「詰め込み」の発想
弁当の発想
まず、最初に挙げられるのは、「詰め込み」の発想ではないかと思います。
弁当の発想とは、つまり、決められた枠(弁当箱)を前提に、そのなかに工夫をして色々なものを詰め込んでいく発想です。
多機能化、複合化した日本のケータイ
これをイノベーションの文脈で捉えると、機能の詰め込みの発想といえます。
ケータイのようなハードとソフトが合体した斬新なサービス・アイディアの進歩は、日本の特異とするイノベーションであり、日本の発展にとって重要です。
拡大志向の欧米と詰め込み志向の日本
日本の機能の詰め込みは、非意図的であるが故に、関連性のない(合目的性の低い、つまり、合理的ではない)機能を詰め込み、思わぬ機能の複合化を引き起こし、結果的に、思いもつかぬものが具現化するのではないでしょうか。
また、詰め込みの発想自体は、決して充足されることがないので、詰め込みという行為は収束していく傾向をもつにもかかわらず、機能の詰め込みは、止まることなく続けられるのです。
イノベーションという観点からみると、欧米は、強い意図性と合理性の故のイノベーション志向の減衰を打破するために、「Out of Box Thinking(箱の外の思考)」といって、枠を超えて、拡大化することをつねに意識させています。一方、日本はどうかというと、逆に枠をはめて考えるわけです。
2 「小型化」の発想
「手」に対する日本人の意識
「小型化」の発想は、「手」に対する日本人の意識と大きな関係があると思います。
日本人は、「手」を介して外界と繋がっていて、それを判断基準にしているのではないでしょうか。
実際、「手に余る」「手に負えない」「手中に収める」という表現を使うことからもわかるように、「手に収まる」ことが良い状態であり、「手に収まらない」のは悪い状態とされるわけです。
そして、「手に収まる」とは、小型化の発想に繋がるわけです。
この「手」から発する、国民レベルでのあくなき「小型化」の発想は、きわめて強い日本のイノベーション技法であることは、いうまでもないことだと思います。
「手を通した小型化と詰め込み」の力
この「手を通した小型化と詰め込み」の発想は、製品の多機能と小型化、そして、それによる部品の高度化・小型化・軽量化を絶えることなく行っていくことに繋がります。
インテグラル型のアーキテクチャーに強みをもつ日本
この続きは、次回に。