完訳 7つの習慣-人格の回復-43
協定
人間関係を築ければ、Win-Winの中身を明確にし、そこに至るまでの道筋を示した協定を
結ぶことができる。
業務契約やパートナーシップ協定などと呼ばれ、人間関係のパラダイムは、上下関係から
対等な立場で成功を目指すパートナーシップの関係に変わる。
Win-Win実行協定は、相互依存の人間関係に幅広く応用できる。
Win-Win実行協定では、次の五つの要素をはっきりと決めることが大切である。
・ 望む成果
いつまでに、何を達成するのか(手段を決めるのではない)
・ ガイドライン
望む結果を達成するときに守るべき基準(規則、方針など)
・ リソース
望む結果を達成するために使える人員、資金、技術、
組織のサポート
・ アカウンタビリティ(報告義務)
結果を評価する基準、評価する時期
・ 評価の結果
達成度合い、貢献度合い、評価の結果としてどうなるのか
この五つの要素が満たされれば、Win-Winの協定は現実のものとなり、
正式な「実行協定」となる。
これらの基準を明確にし、関係者全員が了解して同意していれば、自分の仕事の結果が
成功かどうなのかを一人ひとりが自分で判断する。
Win-Winのマネジメント・トレーニング
「セルフ・コントロール型研修」
これはWin-Win実行協定である。
目標を明確にし、達成度合いを測る基準を設定し、ガイドライン、リソース、アカウンタビリティ、
目標が達成できたときの結果に対する評価を決めておくのである。
パラダイムを見直し、Win-Winを真剣に目指す勇気があれば、このような考え方を
組織のあらゆる活動に応用できる。
責任感があり主体的で、自己管理のできる人が自由裁量を与えられて仕事に取り組むとき、
個人と組織にもたらされる結果に私は常に驚きを覚える。
Win-Win実行協定
WIN-Win実行協定を作成するには、根本的なパラダイムシフトが求められる。
まず、手段ではなく結果に目を向けなければならない。
手段は本人の選択に任せることで、個々人の大きな潜在能力が解き放たれ、
シナジーを創り出せる。このようなプロセスを踏めば、Pだけにとらわれず、
PCを育てていくこともできるのである。
Win-Win実行協定では、各自が自分で仕事の評価をする。
これがアカウンタビリティである。
自分で評価し、報告する義務を負うのである。
経営学者のピーター・ドラッカーは、管理職と部下との間で業務の合意事項を明確にするために
「マネジメント・レター」というものを活用するとよいと勧めている。
組織の目標に沿って、望む成果、ガイドライン、リソースを具体的に話し合って決めたら、
部下はその内容を手紙にまとめ、次回の業務計画の話し合い、あるいは
評価面談の時期も明記して上司に出す。
上司であれ親であれ、Win-Win実行協定でコントロールできる結果に対する評価は、
基本的な四種類ある。
金銭的な結果、心理的な結果、機会、責任である。
金銭的な結果は、昇給やストックオプション、手当て、罰金などであり、心理的な結果は、
評価、承認、尊重、信頼などを得る。
あるいは逆に失うことである。
機会に関わる結果には、研修や特別なトレーニングへの参加、権限、その他の恩恵がある。
責任に関わる結果は、職務範囲や権限が拡大するか、逆に縮小することである。
Win-Win実行協定では、こうした結果を前もって決めるから、関係者全員が
了解して仕事に入れる。
先の見えないゲームをするわけではない。
すべてが最初からはっきりと決まっているのである。
本物のWin-Win実行協定は、パラダイム、人格、信頼関係の土台があって
初めて生まれるものである。その意味からすれば、当事者同士の
相互依存の関係を明確にし、方向づけるものと言えるだろう。
システム
組織の中にWin-Winを支えるシステムがなければ、Win-Winの精神を
定着させることはできない。いくらWin-Winと口で言っても、給与や報酬の仕組みが
Win-Loseになっていたら、うまく機能しない。
社員にしてみたら、会社が報いようとする行動をとるのは当然である。
会社のミッション・ステートメントに書いてある目標と価値観を実現し、組織に根づかせたいなら、
報奨などのシステムもその目標と価値観に合うものにしなければならない。
システムと食い違っていたら、言動不一致になってしまう。
Win-Winが機能するには、それを支えるシステムが必要である。
社員教育、事業計画策定、コミュニケーション、予算、情報管理、給与体系-
すべてのシステムがWin-Winの原則に基づいていなければならない。
Win-Winとは、ガイドラインと使えるリソースをはっきり決め、その範囲内で具体的な結果を
達成する責任を個人に持たせる考え方である。
任せられた人は、自分で仕事を進め、成果を自分で評価し、報告する。
最初に決めたとおりにできた場合に得られるもの、できなかった場合に失うものは、
自分自身の行動の当然の結果なのである。
Win-Winのシステム実行協定を結び、定着させる環境をつくりだす。
この続きは、次回に。