ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 6
ドラッカー山脈を自らの足で登れ
ドラッカーの経営思想にチャレンジする人々に、ひとつの手がかりとなるので
あろう道標を掲げるが、まっとうに攻めるにはまず自らの足こそ、最初にして
最後のよりどころであることを力説しておきたい。
人間の可能性への信頼
ドラッカーの熱っぽさとは、
第1にその経営の現実と本質追求への精神的態度の熱っぽさである。
ドラッカーのいずれの書を開いても、心から人間と、人間の可能性、主体的、
そして未来を信じ熱情を傾けて語る、ドラッカーの息吹が感じられる。
ドラッカーが活きているというもうひとつの理由は、
ドラッカーの思想が立ちどまらずに絶えず進展して止まないことに基づく。
“脱皮できない蛇は死ぬ”とニイチェは言った。
ドラッカーもかつて、「自分にわからせるために、自分自身を超えるために、
自分の理解を乗りこえるために、本を書くのだ」と語っていた。
この言葉からも、ドラッカーの思索の構え、変わり身のある姿勢がうかがわれよう。
まさに心して学ぶべき思考のポーズである。
現代社会を見つめるズームアイ
ドラッカーの関心も興味も、煎じつめればひとつなのである。
すなわち、現代社会をしっかりと把握したいという気持ちひと筋に
連なっているのである。
そのための研究対象とそのアプローチのしかたが、マクロからミクロへ、
ミクロからマクロへ、あるいはその中間帯に立ちどまったりという具合に、
しなやかに変わるだけである。
大局観を持て
ドラッカーの書いたものの訴求力の一番の強さは、その統一性にある。
私がドラッカーの本に接して、ドラッカーから学んだ第1に重要な点は、
“Build on Strength”(ビルド・オン・ストレングス)、
第2に大切な点は、日々生じるもっとも腐りやすい情報に対して、
鋭敏な触覚をもって触れつつそれらに惑わされずに、
大局観(gig picture ビッグ・ピクチャー)としてつかむことを
忘れるなという点である。
第3は、自分の仕事、課題、約束と使命への献身と寄与・貢献(コントリビューション)、
そしてそれを支えてくれるクライアントなどに対する徹底した忠実性と
サービス精神である。そして最後に指摘したいのは、絶えざる心理の探求書としての
旺盛な好奇心をもち、自らの中の既成概念といつも戦いつつ、これを打破する
若さを失わない知的格闘技のベテランとしての姿である。
この続きは、次回に。