ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 40
16章 高齢化への備えを
□ 専門職としてキャリアに徹せよ
アメリカだろうが日本だろうが、2003年までに今の定年方式や、さらには早期退職者を含めて
社会福祉財政は、ほぼ破綻するであろう。
西暦2003年には、アメリカの場合、65歳以上の人1人を、労働力市場にいる人3.3人で
面倒見なければならない勘定になるからだ。
万事をデモグラフィックス(人口動態)から検証することの多いドラッカーは、この高齢化問題、
特に労働力の高齢化こそ最大のチャレンジをなすべき問題だ、とすねるのである。
ドラッカーは、早期退職などいくら勧告しても問題の本質的解決にならず、したがって
職務構造をいかに変えて、高齢者や専門家が貢献しうる形で働けるようになるかを
真剣に考えよ、と訴えるのである。
これまでのように、知識労働を大量生産のモデルで組織化しようとしても土台無理なのだ、
とドラッカーは言う。
しかも働くことに関して、もっと選択肢を増やすことを考えなければならない。
これからの経営者は、歴史一般などではなくて、むしろネイティブ・アメリカンなどの
部族のマネジメントの歴史を研究した方がためになるとすら提言する。
□ 流動性をもつ人々をマネジメントする時代
これからの権威は、知恵と能力と業績によってもたらされる。
それゆえビジネスを運営することを学ぶのではなくて、ビジネスを築き、創ることを
学ばねばならない。従業員は減少するだけでなく、また、昇進など不可能となるばかりでなく、
会社から大学へ戻るなど、いろいろな出入りも多くなるだろう。
しかし、そういう人たちにも正しく報いて認めることをしなければならないのだ。
かくして、部下を前提とした存在であるマネージャーという考え方もそろそろ捨てて、
エグゼクティブとかリーダーという発想をもっと本格的に持つ必要がある、
とドラッカーは説く。
これからはまた経営者は、知識労働者たちをボランティアのようにマネジメントしなければならない。
期待と自信とネットワークをもつ人々、そして流動性をもつ人々をマネジメントする時代に
なってきているのだ。
それには第1に、明確な使命があることが必要となってくる。
つまりその組織が達成すべきことを、知識労働者たちがはっきりと認識していなければならない。
第2は、成果への責任。第3は継続学習の重視である。
そのためには、人間の強味をより効果的に活かし、弱味を滅殺し、成果を重視することを
求めなければならない。
マネジメントは哲学ではなくて成果をあげるための実践活動である。
そこにおいては、とくに長期と短期の成果をどうバランスさせるかが絶えず
チャレンジ対象となろう。
そして最後にドラッカーは、
(1) 企業間の相互依存度がますます高まること
(2) 市場/顧客志向がもっと強まること
を強調し、いつもの「窓の外を見よ」「表の風に吹かれよ」を力説している。
この続きは、次回に。