お問い合せ

「孫子 抜粋」 ⑨

81. 能因敵変化、而取勝者、謂之神

   よく敵に因(よ)りて変化し、しかも勝ちを取るは、これを神(しん)という


   相手に従ってこちらは変化し、しかも勝ちをおさめる。

   これは小賢(こざか)しい知恵や常識的な力の意識を超えたものである。

82. 五行無常勝、四時無常位、日有短長、月有死生

   五行(ごぎょう)に常勝(じょうしょう)なく、四時に常位(じょうい)なく、

   日に短長あり、月に死生あり



   この世に絶対の勝者はいない。四季は止まることなく変化は繰り返す。
   日の長さは長くなれば次は短くなり、短くなれば次は長くなる。

   月は満ちたら欠け、欠けたら満ちる。

83. 以迂為直、迂其途而誘之以利、後人発、先人至、此知迂直之計者也

   迂(う)をもって直となす、その途(みち)を迂にしてこれに誘うに利をもってし、
   人に後(おく)れて発し、人に先んじて至る、これ迂直の計を知る者なり

       回り道をすることにより、かえって近道をいく以上の効果をあげる。
   こちらは回り道し、敵が有利なように思わせて誘い込み、後から出発して先に到着する。

   これが迂直の計である。

84. 以患為利

   患(かん)をもって利となす


   わざわいを利益に変える。

85. 軍争為利、軍争為危、挙軍而争利則不及、委軍而争利則輜重捐

   軍争(ぐんそう)は利たり、軍争は危(き)たり、
   軍を挙(あ)げて利を争えば及ばず、軍を委(す)てて利を争えば

   輜重(しちょう)捐(す)てらる



   戦いに際して、有利さと危険性は紙一重である。
   全軍あげて戦線に投入すれば、不測の事態に備えられないことができてくる。
   また、戦闘部隊だけが突き進むと、後続の輸送部隊が切り離され補給ができなくなってしまう。

86. 不知諸侯之謀者、不能予交

   諸侯の謀を知らざる者は、予(あらかじ)め交わること能(あた)わず


   つねづね親しく交流するためには、各国の攻略をよく知っておかなければならない。

   それを知らずに交流するのは危険である。

87. 不知山林険阻沮沢之形者、不能行軍

   山林・険阻・沮沢(そたく)の形を知らざる者は、行軍すること能わず

   行軍するには、十分に地形を知らなければならない。

88. 不用嚮導者、不能得地利

   嚮導(きょうどう)を用いざる者は、地の利を得ること能わず

   地の利を得るには、案内人を使うことである。

89. 兵以詐立、以利動、以分合為変者

   兵は詐(さ)をもって立ち、利をもって働き、分合をもって変をなすものなり

   戦術とは、敵をだますことを基本とし、有利な状況を作り出すために行動し、
   変化に応じて自由自在に兵力の分散と集中を行うものである。

90. 其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、動如雷霆

   その疾(はや)きこと風のごとく、その徐(しず)かなること林のごとく、
   侵掠(しんりゃく)すること火のごとく、動かざること山のごとく、
   知りがたきこと陰のごとく、動くことは雷霆(らいてい)のごとし

   疾風のように行動するかと思えば、林のようにひっそりと静まりかえり、
   襲撃するときは烈火のように猛然と、動かないとなったら泰山のようにどっしりと、
   ときには闇に潜んだかのように身を隠し、ときには雷のように轟きわたる。

この続きは、次回に。

トップへ戻る