お問い合せ

「孫子 抜粋」-13

121.厚而不能使、愛而不能令、乱而不能治、譬若驕子、不可用也
         厚くして使うこと能わず、愛して令すること能わず、乱れて治(おさ)むること能わざれば、
         たとえば驕子(きょうし)のごとく、用うべからざるなり

         部下を厚遇するだけで、思い通り使えず、かわいがるだけで、命令できず、乱れていても

         治めることができなければ、親が甘やかしすぎてわがまま息子にしてしまうようなもので、

         使いようがなくなってしまう。

122.戦道必勝、主曰無戦、必戦可也、戦道不勝、主曰必戦、無戦可也
         戦道必ず勝たば、主は戦うなかれというも、必ず戦いて可なり、
         戦道勝たずんば、主は必ず戦えというも、戦うなくして可なり

         必勝の見通しがつけば、主君が戦うなといっても戦うがよい。
         だが、必勝の見通しがたたなければ、主君が戦えといっても戦うべきではない。

123.進不求名、退不避罪、唯民是保而利合於主、国之宝也
         進んで名を求めず、退いて罪を避けず、ただ民をこれ保ちて、利、主にあう、国の宝なり

         成功しても自分の手柄にはしない。

         失敗すれば自分で責任を負う。ひたすら人民の安全を図ることに努め、しかも主君の利益を

         損なわないようにする。こういう将帥こそ、まさに国家の至宝というべきであろう。

124.知吾卒之可以撃、而不知敵之不可撃、勝之半也、
        知敵之可撃、而不知吾卒之不可以撃、勝之半也

        わが卒のもって撃るべきを知るも、敵の撃つべからざるを知らざるは、勝(かち)の半(なか)

        ばなり、敵の撃つべきを知るも、わが卒のもって撃つべからざるを知らざるは、勝の半ばなり


        わが部下が敵に勝ち得る力を持っていることを知っていても、
        敵が容易に打倒しにくい相手であることを知らなければ、勝敗の確率は五分五分である。
        敵が打倒できる相手だと知っていても、
        わが軍にそれだけの力がないということを知らなければ、勝利の確率は

        これまた五分五分である。

125.知敵之可撃、知吾卒之可以撃、而不知地形之不可以戦、勝之半也
         敵の撃つべきを知り、わが卒のもって撃つべきを知るも、
         しかも地形のもって戦うべからざるを知らざるは、勝の半ばなり


         敵が打倒できる相手だということがわかり、わが軍にそれだけの力があることが

         わかっても、地形を熟知していなければ、勝利の確率はやはり五分五分である。

126.知兵者、動而不迷、挙而不窮
         兵を知る者は、動いて迷わず、挙(あ)げて窮せず


         兵を知る者(味方の実力、敵の実力、地形を熟知している者)は、行動を起こしたときに

         迷いがなく、戦いが始まっても手詰まりということがない。

127.知天知地、勝乃不窮
         天を知り地を知れば、勝、すなわち窮(きわ)まらず


         天の時、地の利をわきまえておけば、勝利を保ちつづけることができる。

128.古之所謂善用兵者、能使敵人前後不相及、
         衆寡不相恃、貴賤不相救、上下不相扶、卒離而不集、兵合而不斉

         古のいわゆる善(よ)く兵を用うる者は、よく敵人をして前後あい及ばず、
         衆寡(しゅうか)あい恃(たの)まず、貴賤(きせん)あい救わず、上下あい扶(たす)けず、
         卒離れて集まらず、兵合して斉(ととの)わざらしむ


         古来、戦上手は、敵の内部を分断することに長じていた。すなわち、敵の前衛部隊と後衛

         部隊を切り離す、大部隊と小部隊の協調を失わせる、階層間を対立させる、幹部と兵士を

         協力しないようにさせる、兵同士バラバラにさせる、そして、団結しないように

         させるのである。

129.合於利而動、不合於利而止
         利に合いて動き、利に合わずして止(や)む


         利になることならやり、利にならないことはやらない。

130.奪其所愛則聴矣
         その愛するところを奪わば、すなわち聴かん

         相手が一番大切にしている物を奪えば、こちらの言うことを聞くだろう。

この続きは、次回に。

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