認知症にならないための 決定的予防法-51
49歳のジェーンに、私は軽度認知機能障害(MCI)という仮診断を下しました。
ジェーンは座りがちな孤独な生活を送り、精神的な刺激が少ないために、急速に精神面の
衰えが進んでいるのだと私は考えました。
テレビは刺激にはなりません。
ジェーンは明白なストレスを感じているようには見えませんでしたが、実際には目的を
見失ってストレスを受けていたのです。
そこで私は、新しい食事療法と運動プログラム、ニューロビクス、それに社会的な活動を
勧めました。
私たちはニューロビスク脳トレーニング計画を始めました。
それには、目を閉じたままアパート内を手探りで進むことや、「脳を鍛える大人の
DSトレーニング」という任天堂のゲームを買うことや近所のコミュニティセンターで
スペイン語を習うことなどが含まれていました。
毎晩、近所の人と30分間の散歩もすることになり、10分毎に三分割しました。
最初の10分間の終わりに、目を閉じて、聞こえてくるもの、におってくるもの、
感じるものを一心に体験します。
それから、次の10分間で、それについて話し合います。知覚を積み重ねるこれらの経験のなかで、
ジェーンは子供時代を思いださせるソースのにおいに気づきました。
[最後の10分間を使って]そのにおいをたどって三ブロック先まで行ってみると、
ドイツ風デリカテッセンがあり、そこでは実際に、彼女が子供のころから食べていた
ザウアーブラーテン[酢漬けし煮込んだ牛肉料理]が作られていたのです。
三ヶ月後にこの患者を診察してみると、記憶障害はなくなっていました。
脳の働きと短期の記憶を再検査すると、彼女は完全に正常になっていました。
視覚以外の感覚を使って周囲を手探りで進むような新しい経験をすると、神経細胞は実際に
ニューロトロフィンと呼ばれる脳の自然の栄養因子を生成するようになります。
ニューロトロフィンは周囲の細胞を強くし、老化の影響を受けにくくし、神経細胞の
樹状突起の数と複雑さを増すことができます。
毎日、ニューロビクスをおこなうと、脳がより活発に、柔軟に、健康になり、どんな精神的な
難関でもとり組めるようになります。
それが記憶することであれ、作業や芸当であれ、創造的なプロジェクトであれ、変わりません。
この続きは、次回に。