認知症にならないための 決定的予防法-52
活動と目新しいことが新たなシナプスを育てる
最近の研究から、意味ある活動に従事すると、年をとっても認知機能を維持するのに役立つ
可能性があることがわかってきています。
従事すべき活動は積極的な新しい学習、分析、問題解決、頭の回転が必要なものです。
歌をうたう、スケッチや水彩画を学ぶ、近くの小学校で子供たちを指導するといった活動です。
外国語を学んでもいいし、大学の学位やさらに上の学位を取得してもいいし、装飾のコースを
受講したり、新しい楽器を学んだりするのもいいでしょう。
ジェーンのように、近所のコミュニティセンターで開かれているクラスを利用することや、
クロスワードパズル、数独などを毎日解くこと、あるいは近所の読書クラブに参加することなどを、
私は患者に勧めます。
いずれも彼らの人生では新しい経験であり、新しい異なったレベルでの思考が必要となるものです。
新鮮で独特であることを意味する斬新さも、年をとっても脳の敏捷性を失わないために重要なことです。
斬新さは、日常の決まりきった事柄を新しい別の角度から眺めることを意味します。
日常のルーティンから抜けだしてみることや、私の患者のジェーンがやったように、自分の五感に
新たな方法で頼ってみることが、脳を活発で健康に成長させることにつながります。
職場やショッピングセンターへの新しい道順を考えだして、まわりの環境を体験する斬新な方法を、
ぜひ探しだしてみてください。
電車に乗って通勤するときは、目を閉じてさまざまな音やにおい、感触を判別してみてください。
うつらうつらしながら座っている代わりに、10年前、20年前ならやっていただろうことを
考えてみてください。
ふだんとは異なった方法で脳に考えさせて、まったく創造的なモードに脳を切り替えてみてください。
記憶では嗅覚が主要な役割をはたす
現代の人びとは周囲の状況を判断するのに、視覚と聴覚におもに頼っていますが、かつては
嗅覚の鋭さが生き残るためにきわめて重要なものでした。
嗅覚システムは大脳皮質、海馬、および辺縁系のほかの部分に直接のつながりをもつ、
唯一の感覚なのです。
だからこそパンプキン・パイや、チョコチップ・クッキーの特定のにおいなどが、たくさんの
情動的な反応を引き起こすのです。
においの感覚は40代から衰え始め、70歳になるころには50%も失われ、それと同時に味覚も衰えます。
嗅覚がいちじるしく失われるのは、パーキンソン病やアルツハイマー病の前兆です。
ただし、急激な嗅覚の喪失が最もよく見られるのは、呼吸器の状態が悪くなった場合か、
頭部に外傷を受けたあとです。
次のことを試してみてください。目を閉じて、皿の上に乗っている食べ物一つひとつの
においを嗅ぎ、それを思い浮かべてみてください。
最近の研究では、こうすることで嗅覚の予備力が生まれることがわかっています。
この続きは、次回に。