お問い合せ

池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ④

[補足講義] 機会費用とは?

企業経営者は常に無意識のうちに機会費用を考えているということです。

「捕らぬ狸の皮算用」みたいな、そんな感じがあります。

失敗すると「隣の庭の芝生は青いな—-」と思ったりするわけです。

 

市場「イチバ」と「シジョウ」の違い

皆さんはいろいろなものを選んでいく、それでいろいろな商品を買う。

そして皆さんが商品を買うことによって、商品の値段がついていきます。

商品の値段がつくといって、まず皆さんが思い出すのは市場(イチバ)でしょう。

「需要と供給」という言葉を聞いたことがあると思いますが、欲しいという「需要」と、

売りますという「供給」。これによってものの値段が決まっていきます。

円やドルの外国為替も需要と供給によって決まります。

円やドルを買いたい、あるいは売りたいというお客さんの注文を受け付けています。電話で注文を受け、

じゃあ売りますよ、買いますよといって値段が決まることもありますが、実際はほとんどが

コンピューター上で取引が行われています。

でもこれは、マグロや野菜のように実物があるわけではないので、市場(イチバ)ではなく、

市場(シジョウ)という呼び方をしています。

実際に現物が目の前にあって、それを売り買いをする、これが市場(イチバ)。

それに対して市場(シジョウ)というのは、誰が売ろうとしているのか、誰が買おうとしているのか

見えません。コンピューター画面上の極めてバーチャルなものを市場(シジョウ)と呼びます。

市場という言葉には、このような呼び方の違いがあるのです。

 

ものの値段は需要と供給によって合理的に決まる

経済学には、需要曲線と供給曲線のグラフがあります。

経済学というのは、とりあえずこのグラフの読み方、この概念を頭に入れれば、それでいいような

ものです。まず需要曲線。これはものを買う側から見たものです。

横軸は需要量(買いたい数量)、縦軸が価格です。

何か欲しいものがある。でも値段が高いときは、買う人は少ない。すなわち需要が少ない。

ところがものの価格(縦軸)が下がると、その値段なら買ってもいいなという人が増えてきます。

つまり需要量(横軸)が増えてきます。この曲線は右肩下がりになりますね。

これが需要曲線です。価格が高いと買う人が少ない、安ければ大勢の人が買うということを

あらわしています。一方、供給曲線。これは、ものをつくって売る側から見たものです。

横軸は供給量(売る数量)、縦軸は価格です。

価格(縦軸)が低いと、つくっても儲からないので、あまりものをつくりません。

でも欲しいという需要が増えると、高い価格でも買う人が出てくる。

すると、高い価格で売れるなら、もっとたくさんつくろうと、供給量(横軸)が増えてくるわけです。

価格が高くなればなるほど、たくさんの人がものをつくるようになる。

供給曲線は右肩上がりになります。

この需要曲線と供給曲線が交わった場所、ここで値段と数が決まるわけです。

 

人はいつも合理的に行動するわけではない—行動経済学の出現

同じ品質で高い商品と安い商品があれば安いほうを買う。

同じ値段でよいサービスと悪いサービスがあればよいサービスを選ぶ。

そういう人間のモデルのことを「合理的経済人(ホモ・エコノミスト)と言います。

ものごとを全て合理的に考え、合理的な経済活動をする人がいることを前提に経済学というものは

できています。

 

合理的経済人:ホモ・エコノミスト。自己の利益を最大化しようと選択して行動する人間のこと。

多くの経済学モデルの基本前提となっている。

 

経済学というのは、人間はすべて合理的に行動をするということを前提にしてきたのですが、

もっと人間の心理というものを考えながら経済学を組み立てたほうがいいのではないかという

考え方が出てきました。

そのような経済学のことを、「行動経済学」と言います。

 

行動経済学:経済学に心理学を導入。心理学の理論を経済学に導入することで生まれた経済学の一分野。

第一人者であるダニエル・カーネマンは2002年、ノーベル経済学賞を受賞している。

 

なぜ高級ホテルのコーヒーは高いのか

高級ホテルの喫茶で雰囲気を楽しみながらコーヒーを飲む、その雰囲気を楽しむためであれば、

高いお金を出してもかまわないという人が大勢いるから高い値段で成り立っているんです。

需要と供給の話で言えば、高い値段でもそこで飲む人がいるから、高いコーヒーが供給されていると

いうことですね。

このように、ものの値段は、需要と供給でもっぱら決まります。

 

需給ギャップが日本経済回復の足かせに

さて、いま日本の経済はなかなかうまくいっていません。

どうしてなんでしょうか。そこでよく出てくるのが、「需給ギャップ」という言葉です。

需給と供給のあいだにギャップがあるということです。

つまりたくさんのものがつくられて供給がたくさんあるのに、欲しいという人がいない。

つまり需要が少ない。だから売ることができない。

逆に言えば、供給を減らす、あるいは需要を増やすことによって、需給がぴったり一致すると

経済がうまく回っていくんだということがわかります。

 

 需給ギャップ:供給力と実際の需要の差。バブル崩壊以降の日本経済回復の恐れは、バブル期に

企業が供給力を増やし過ぎたことによる需給ギャップが縮まらないことが大きな要因の一つと

言われる。

 

 

 

この続きは、次回に。

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