池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ⑤
インフレ心理とデフレ心理
いま中国ではかなりインフレが進んでいます。
物価の上昇に合わせて給料も少しずつ上がってくる。これが人々の気持ちを明るくします。
よく考えれば、インフレ率が高くなるということはお金の価値が下がっている。
額面で給料が増えていても実質的にはむしろ減っているかもしれない。
でも給料の額が増えるとうれしいですよね。もっとがんばろうという気になる。
いま中国が非常に元気なのはそういうことも理由の一つなのです。
日本の場合はその逆でデフレですから。
インフレとデフレ、どちらであっても困りますが、いまはデフレという何となく先行き、
見通しが暗くなります。そのため、ゆるやかインフレがいちばん望ましいのではないかというのが
現在の世界の経済学者の共通の認識になっています。人間の心理って不思議なものでしょう。
合理的に考えればお金の価値が上がっていけばうれしいはずですが、額面が増えないと何となく
気分がよくない。これがインフレとデフレをめぐる心理なのです。
震災復興に力を入れることも処方箋の一つである。
私たちはいまデフレの中にいます。
ちょっと前までの経済学の教科書にはそもそも出ていなかった現象、想定もしていなかったような
新しい現象です。新しく大きな問題が起きたとき、それを解決する新しい経済学が生まれ、
それによってまた世の中がよくなっていく、そうするとやがてまた別の問題が起きてくる。
そういう意味で言えば、まさにいまこのデフレから脱出する新しい経済学が求められている時代とも
言えるのです。
インフレ心理、デフレ心理で言えば、いま世の中はみんなデフレ心理になっています。
これを一挙にインフレ心理に切り替えるような何かインパクトのある政策や方針をとることに
よって、デフレから脱却することができるのかもしれない。
さあ、それは果たして何だろうかということを考えてみることが大事なのです。
Q 復習問題 1
第1問 コスト・プッシュ・インフレは望ましいインフレである。
× コストが押し上げられて物価が上がるので望ましくない。
第2問 デノミとは通貨単位を切り下げることである。
◯
第3問 物価上昇率と失業率の関係を示すものは、次のうち2である。
1 フィップス曲線
2 乗数効果
3 受給曲線
× 1の「フィリップス曲線」
この続きは、次回に。