池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ⑥
政府か日銀か—-財政政策と金融政策
—-景気をよくするためには、主に2つの政策があります。
一つは、国が公共事業をするケインズ流の財政政策。
もう一つは、日銀が誘導して金利を下げる金融政策です。
それぞれ政府や日銀はどんなことをするのでしょうか。
また2つの政策にはどのような違いがあるのか見ていきます。
膨大な赤字国債を返済していく有効なプランはあるのですか?
選択肢は2つです。
理想は景気対策をして税収を増やす。
もう一つはこれ以上借金を増やさないように増税することです。
公共事業と減税、2本柱の財政政策
日本や世界の景気がよくない状態が続いてきました。
景気をよくするためにはどうしたらいいか、一般的には2つのやり方があります。
一つは財政政策、もう一つは金融政策です。
まずは財政政策です。その一つは公共事業があります。そしてもう一つが減税です。
しかしこれらの政策をとっても景気がよくならなければ税金が入ってきません。
赤字になれば国債を発行してお金を得るわけですから、国債がどんどん増えていってしまう。
やがて財政赤字がたまっていくという大きな問題があります。
なぜ日本では減税の効果が出ないのか
日本の場合、公共事業ではそれなりに景気がよくなるのですが、減税は実はあまり効果がないのでは
ないかと言われています。
アメリカではよく減税して、景気をよくすることがあるので、アメリカと日本の減税では事情が
違います。その違いを見ていきましょう。
日本では税金の徴収は源泉徴収というやり方が一般的です。
一方、アメリカには源泉徴収の仕組みはありません。
このようにアメリカと日本では税金を徴収する仕組みが違うので、アメリカでは減税が景気対策として
効果があるけれども、日本ではあまり効果がないとされています。
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源泉徴収:給料などの所得にかかる税金について、会社が給与から税金を差し引いたうえで
給与を支払い、給与受取人の代わりに納税する制度。
戦争の費用のために始まった源泉徴収
源泉徴収というしくみを取っているのは、実は世界でも極めて珍しいんですね。
日本が源泉徴収をするようになったのは、日中戦争の泥沼化が原因です。
戦争の費用が必要なのに、国にお金がない。
国民から税金を大量にとるにはどうしたらいいだろうかと考えました。
個人が国に税金を納めるのではなく、企業が源泉徴収として国の代わりに税金をとるようにすれば、
とりはぐれがないだろうとこの制度にしたのです。
1940年にこのしくみが始まりましたが、確実に税金を徴収できるため、戦後もずっと続いています。
日本銀行の3つの役割
財政政策をとってもなかなか税収が増えなければ、赤字国債がどんどん増えていきます。
このように財政政策には限界があります。
そこで景気をよくするためのもう一つの方法として金融政策があります。
金融政策は日本銀行が行います。日本銀行には3つの役割があります。
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日本銀行 3つの役割
- 銀行の銀行 → 一般の銀行が預金をする
- 政府の銀行 → 政府に入ってきたお金を管理する
- 発券銀行 → お札を発行する
金利は日本銀行が決めていた
かつては日本の金利は、日本銀行が民間の銀行にお金を貸すときの金利である公定歩合で決めて
いました。日本銀行が金利を決め、私たちが預金をした時に受け取れる金利はどこの銀行でも
同じだったのです。でもそれはおかしいだろう、各銀行が自由に金利を決められるようになったのです。
1995年に金利が自由化されました。銀行によって金利が微妙に違ったり、店舗を持たないネット銀行では
金利が高かったりと各銀行が自由に金利を決められるようになったのです。
金利が自由化されたのなら、日本銀行がそもそも金利はこれだけと決めるのもおかしいだろうと
いうことになり、公定歩合というやり方をやめ、日本銀行がマーケット=市場の中で金利が決まるように
誘導していこうということになりました。
現在は日本銀行がこれくらいが望ましいなという金利に誘導しているのです。
公定歩合:日本銀行が民間の銀行に貸し出す際の基準金利。金利が規制されていた時代には、
金融政策の基本姿勢を表す代表的な金利だった。
この続きは、次回に。