池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ㉔
アメリカの投資銀行とは
ところが投資銀行には、そういったチェックをする組織がありません。
なぜか。投資銀行は一般のお客さんを相手にしていないからなんですね。
「銀行」とはつきますが、一般の人たちからお金を預かるということはありません。
プロの投資家たちに、こういった新しいプロジェクトがあるので投資しませんかと持ちかけるんですね。
プロを相手にしていますから、潰れてしまったら自己責任ということになるわけです。
投資銀行には、他にもこんな事業があります。
社債を発行してお金を集め、そのお金で株式投資などの新しい投資をしていきます。
あるいは、ある会社がどこか他の会社を買収して事業を広げたいと考えていると、
じゃ私どもでふさわしい会社を探しましょう、ここはどうですかと提案し、いくら資金を出せば
その会社は買収に応じるでしょう、という交渉をして買収を成立させます。
その時に膨大な手数料を得るわけです。
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
リーマン破綻のきっかけは「サブプライムローン問題」
では、そんな大きな利益を上げていたリーマン・ブラザーズが破綻するきっかけは何だったのか。
それは「サブプライムローン」をめぐる問題でした。
「サブ」とは2番手という意味、「プライム」とは優良な、または重要な問いう意味です。
「ローン」というのは借金ですね。「プライムローン」というのは優遇ローンなんです。
お金を貸したらちゃんと返してくれる優良なお客さんに貸すのがプライムローン。
信用があるから、低い金利で貸し出します。
一方、お金を返してくれるがどうかわからないリスクのある人には、高い金利で貸すのが
金融機関の大原則です。つまり優良なお客さんでないけれど、リスクを見込んで高い金利で
お金を貸しましょうというのがサブプライムローンです。
サブプライムローンとは、信用力の低い人を対象とした高金利の住宅ローンです。
マイホームを買う時、毎年安定した収入があって、きちんと返済ができる人はプライムローンで
融資を受けることができます。一方、定収入がない人や、クレジットカードの支払いを延滞した
ことがある人を対象とするのが、このサブプライムローンです。
サブ=2番手、プライム=優良な、ローン=貸付
サププライムローン貸付のからくり
返済能力の低い人に、どうしてお金を貸すことができるのでしょうか。
これにはしくみがあります。
10人や20人にお金を貸した場合、その中で返せない人が何人かいると金融機関は大きな損害を受けます。
でも何千、何万という人に貸せば、何%の人がお金を返さずに夜逃げしてしまうか、何%の人が
お金をちゃんと返すかというデータを取ることができます。
そのデータに基づいて、最初から何%の人がお金を返さない、ということを前提に、残りの人から
回収すれば利益が上がるように高い金利をつけるわけです。つまり、サブプライムローンで高い
金利を払っている人は、払えずに踏み倒した人たちの分まで払っているという人になります。
サブプライムローンでも全体としては利益が上がるしくみができたということなんですね。
アメリカの住宅ブームとバブル
アメリカでは2002年くらいからこのサブプライムローンを借りる人が増えていきました。
その背景には、アメリカの住宅ブームがありました。
住宅の値段がどんどん上がっていったんですね。しかし06年、07年にかけて、このブームは突然
終わってしまいました。つまり、住宅バブルであったということです。
アメリカでも住宅ブームという言い方をしていました。
住宅が飛ぶように売れ、土地の値段が上がっていきます。
サブプライムローンで高い金利を払ってでも住宅を買えば、しばらくすると買ったときよりも
高い値段で売れます。お金を貸す側としても、返してもらえなくなったら担保になっている土地や
建物を売れば、むしろ土地の値段が上がっているので利益が得られます。
こうしてサブプライムローンの貸出しが一気に広がっていったのです。
アメリカでも、このときバブルが起きていたということです。
住宅ブームとバブル:アメリカの好景気の一方で、バブルではないかと指摘する声も一部にあったが、
例えば元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏は当時これを強く否定した。
この続きは、次回に。