池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ㉖
格付け会社が商品にお墨付きを付与した
AAA(トリプルエー)とかAA(ダブルエー)、A+(シングルエープラス)とか言ったランクをつけて、
それぞれの金融商品がどれくらい安全かと言う格付けをします。
この格付け会社のお墨付きがあれば、銀行は安心して買うことができるわけです。
会社が社債を発行し、格付け会社がこの社債は安全ですよとAAAをつけると、リスクが少ない
わけですから金利は低くて済みます。
社債を発行する会社は非常に助かりますよね。
一方、A-(シングルエーマイナス)やBBB(トリプルビー)といった低い格付けがされてしまうと、
リスクが高いと言うことでその分高い金利をつけないと社債を買ってもらえなくなります。
社債を発行する会社は、格付け会社に依頼して格付けをしてもらう際に手数料を支払います。
ただし、この格付け会社も単なる株式会社です。
格付け会社などというと、政府のお墨付きがあるとか、ちゃんとした営業許可を持っているとか
いったイメージを持ってしまいますが、そんなことはありません。民間の一企業なんですね。
この格付け会社が、サブプライムローンの債権を組み込んだ新しい金融商品を格付けしました。
いろいろな債権が組み込まれたパッケージ商品なら一度に全部焦げ付くことはないからリスクは
低いよね、と言って、主要な格付け会社が軒並みAAAなどの高い格付けをしたのです。
こうして投資銀行は、このお墨付きのついた新しい金融商品を世界中の銀行や会社、投資機関に
大量に売りました。
日本でも金融機関や会社、あるいは地方自治体や某有名私立大学などもこれを買っていました。
格付け会社:債権等に関して、その発行体の財政状況などから元利金支払能力を分析し、評価を
示す民間企業。
住宅バブルがはじけ、サブプライムローンの破綻が続出した
しかし、バブルはやがてはじけます。
アメリカの住宅ブームは終わり、サブプライムローンの返済に行き詰る人が続出しました。
担保である土地や建物の値段は暴落してしまいました。
それはつまり、このサブプライムローンの債権の価値が暴落したということです。
損失額がわからず不安が広がる
住宅ローン証券事態は紙屑ではありません。
でも中身が複雑になりすぎて、全体としての商品価値がわからなくなってしまった。
損失額を計算するのに、大変な時間がかかることになってしまったのです。
これによって、人々は非常に不安な状態になりました。
このようにしてパニックが起きました。金融機関同士は疑心暗鬼になっていきます。
世界中の金融機関のお金の貸し借りがパタッと止まってしまいました。
リーマン・ブラザーズが経営破綻に追い込まれる
リーマン・ブラザーズはもともと債権ビジネスに強みを持ち、住宅ローンなどの証券化業務に
傾斜していたため、巨額の損失を抱え込んでいるらしいという認識が投資家たちの間に広まりました。
そのため、同社に対する信用は落ち込み、社債も株価も急落してしまいました。
こうして資金繰りに行き詰まりリーマン・ブラザーズは2008年9月、経営破綻しました。
当時、アメリカは共和党のブッシュ政権でした。
共和党は「小さな政府」を提唱する政党です。
政府は民間会社の経営に口を出すべきではない、それぞれの会社が自己責任において行動する
べきだという、フリードマン的な考え方だったわけです。
ですから、アメリカ政府はリーマン・ブラザーズに公的資金を投入せず、破綻させたのです。
リーマン・ブラザーズ経営破綻:2008年9月15日、連邦破産法第11条の適用を連邦裁判所に申請して
倒産した。負債総額6,130億ドルで、米史上最大規模。
リーマン・ショック—世界的な金融危機へ発展
リーマン・ブラザーズが破綻したことによって、ますます金融不安が広がりました。
世界中のお金の流れが止まり、バタバタと金融機関が潰れていくことになります。
これがリーマン・ショックと呼ばれる出来事でした。
これが引き金となり、深刻な不況が広がっていきます。
2009年6月、アメリカの自動車ビッグスリーのトップ、ゼネラル・モーターズが倒産しました。
当然、トヨタやホンダといった日本車もアメリカで売れなくなってしまいます。
輸出産業は大打撃を被り、日本経済も落ち込んでいきます。
こうして、連鎖的に世界が深刻な不況陥っていったのです。
この続きは、次回に。