超ロジカル思考 「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング⑪
✔️ 未来を「創られてしまった」日本企業
それでは先ほどの市場構造の図の中で、日本の携帯電話メーカーはどのようなポジショニングに
なるのだろうか。
ここでまたエクササイズをやってもらおう。
Exercise 3-5
日本の携帯電話端末メーカーの多くが、スマホで苦戦したり、スマホから撤退してガラケーに
シフトしている理由を考えてください。
☆ ヒント
先の市場構造の図の中に、日本の携帯電話端末メーカーのポジションを描いてみましょう。
スマホの中には何千という知的財産が入っており、開発には膨大なコストがかかる。そのため、
投資したお金を回収するためプールが必要になる。
アップルやサムスンがグローバル市場を対象にビジネスを展開しているのはそこに理由がある。
サムスンは新興国に成長ポテンシャルを見出し、そこをターゲットに定めた。
アップルは世界中のアーリーアダプターを資金回収源としている。
未来を自らの手で創りあげるためには、ジョブズやイ・ゴンビのように、市場構造・事業構造・
収益構造のあり方をゼロから練り上げる必要がある。
そこを曖昧にしたまま事業を始めてしまうと、他の誰かに未来を創られてしまい、気づかないうちに
負けが決まってしまうということになりかねない。
孫さんが100通りのシミュレーションをしてからでないと事業を始めてはいけないと自らに
義務づけているのはここに理由がある。
✔️ 人間性と技術の交差する場所
ジュブズは人間性と技術の交差点、あるいは人文科学と自然科学に立っていたと言っていいだろう。
ある角度からはエンジニアに見え、別の角度からはアーティストに見える人物だ。
ステップ1で見てもらった「だまし絵」のような存在と言えるかもしれない。
こうした存在であることが、技術を使い手の視点から観察し、GUIやタッチパネルのクリエイティブな
使い手を発見することにつながったのだ。
残念ながら生みの親であるゼロックスのエンジニアたちには、GUIのポテンシャルが見えなかった
のである。また、ある角度から見ると垂直統合型に見え、別の角度からは水平型プラットフォームに
見えるアップルのビジネスモデルも、両義性を持ったジョブズの存在があってこそ生まれてきた
ものであろう。
ものごとをひとつの方法からしか見ない人には、異なるいくつかの戦略が存在しうると考える人だけが、
未来を自ら創りあげることができるのだ。
STEP 3 まとめ
未来を自ら創りあげるために、次のトレーニングに取り組んでみましょう。
◉ 新規事業のテーマをひとつ取り上げる。
すでに戦略がある場合にはまずそれを捨てる。
◉ その事業の市場構造とスイートスポットについて、複数の可能性を描き出してみる。
◉ スイートスポットであるターゲット顧客に感情移入し、成功要因になりそうなことをリストアップする。
◉ その中から、他社が簡単に真似できることは捨てる。
◉ 捨てられず残った成功要因に基づきビジネスモデルを考える。
◉ 最後に、収益構造や売上増加のドライバーについて、複数の可能性を考える。
この続きは、次回に。