IoTビジネス入門 ⑦
第1部 IoTが生み出す生活の四大変化
第1部では、「家ナカのIoT」「クルマとIoT」「医療やヘルスケアとIoT」「高齢化社会とIoT」という
順に、我々の生活を取り巻く4つの分野で、IoTがどのように進んでいるのかを見ていきます。
また、自分がIoTビジネスをやるとしたら、どういう点に注視して事例を読み取れば良いのかについて、
具体的な例をあげて解説していきます。
生活者向けのIoTビジネスを行う上での要点や注意点についても事例を通して説明していきますので、
自分が「そのビジネスの当事者だったら」どうやっていこうかとイメージしながら読み進めていって
ください。
そうやって、事例を通したIoTビジネスを追体験することで、インスピレーションを沸き立たせる訓練が
できるのです。
第1章 モノが「つながる」メリットを理解する
四大変化について話を進める前に、まずは、「IoTとはどういうことか、どういうメリットがあるの
か」について「スマートロック」を例に順を追って説明していきます。
この例を通して、モノがインターネットにつながるイメージを持てるようになりましょう。
そのうえで、IoTビジネスを立ち上げる中でぶつかる多くの壁についても、実際に起きた例を見ながら
追体験してみてください。
そうすることで、IoTがより具体的なイメージとなるでしょう。
■ 家のカギを「つなげて」みる
IoTがイメージしづらい、モノがインターネットとつながって何がいいのかわからない、という人の
ために、まずは「スマートロック」というモノを通して「モノがインターネットにつながるイメー
ジ」を説明していきます。
現在、みなさんの自宅のカギはインターネットにつながっているでしょうか?
ほとんどの家庭では、インターネットにつながったカギなど使っていないでしょう。
自宅のカギをインターネットに繋げたら何がいいのかなど、まったく想像もつかないはずです。
そこでまずは、自宅のカギがお手もとのスマートフォンで開けられることをイメージしてみましょう。
通常、カギはキーケースにつけてカバンなどに入れていると思うのですが、「スマートロック」では、
スマートフォンのアプリを起動して、ボタンを押すとカギが開きます。
スマートフォンのアプリでカギが開くイメージはつきましたか?
次に、カギを複製してみます。通常、カギの複製は、カギ屋さんで行うと思うのですが、スマート
ロックの場合は違います。
そもそも、スマートロックのカギはアプリで提供されているので、App StoreやGoogle Play からアプリを
ダウンロードをして、自宅のカギを開ける権限をアプリの持ち主に渡す」ことになるのです。
これで、他人のアプリでも自宅のカギが開けられるようになります。
この仕組みを使うと、例えば家族でカギを共有したいときも、カギのアプリをスマートフォンにダウン
ロードして設定するだけで、カギを共有できるのです。
いくらアプリを使ってコントロールしていれば、カギの入ったスマートフォンを失くした場合でも、
新しいスマートフォンにアプリを再度ダウンロードして、権限を与えればよいのです。
ここまでだと、「カギ屋さんに行かなくてよくなった」くらいの恩恵しか得られません。
そこで、小さなお子さんがいて、お子さんにはスマートフォンをもたせていない場合を考えます。
お子さんの帰宅時間にうっかり買い物に出てしまったお母さん。
お子さんは家の前で待ちぼうけをするところですが、最近は「見守りケータイ」という、決まった
ヒトには電話がかけられるモノを持たされている子供が多く、お母さんに、「家に入れない」ことを
電話で伝えることが可能です。
そこでお母さんは、電話で連絡を受けた後、「家の前で待っている子どものために、外出先から家の
カギが開けられればいいな」と思うでしょう。
そういうとき、家のカギがインターネットにつながるスマートロックだったらどうでしょうか?
お母さんがカギのアプリを使うことで、外出先からでもカギを開けられるイメージがつくのではない
でしょうか。
IoTにおいては、単にモノがインターネットにつながることがよい、というわけではなく、こういった
よくある課題を解決できることが、モノがインターネットにつながるメリットとなるのです。
しかしこの例を知って、家のカギをインターネットにつながる「スマートロック」に買い替えようと
思う人はどれくらいいるでしょうか?
正直、それほど多いとは思えません。
ところが、こういった生活に密着した課題を乗り越えようとしたところに、新たな商売のタネが見出
されるのです。
そこで、スマートロックを活用して新たな切り口でビジネスを始めている例を見ながら、IoTビジネスを
展開するイメージを湧かせてみましょう。
この続きは、次回に。