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IoTビジネス入門 ㉒

■   IoTによって「真・第四次産業」が登場する

 

第一次産業(農業など)から第二次産業(工業など)、そして第三次産業(サービス業など)へと移り

変わってきた流れの中、IoTによって「第四次産業」ともいうべき産業が生まれようとしてきて

います。

第四次産業というと、製造業関係者の間では、ドイツを中心に起きた製造業の改革である

「Industorie4.0」を指す場合が多いです。

しかし、これは製造業で起きている変化のことだけを指すので、産業革命というよりも、

「製造業の進化」といえます。

一方、IoTの社会においては、製造業という狭い範囲ではなく、実際は消費者を巻き込んだもっと

大きな革命が起きていることに向けなければなりません。

これを本書では、「真・第四次産業革命」と呼ぶことにします。

真・第四次産業の代表例は、タクシー配車サービスに端を発した「UBER」や、民泊と呼ばれる、

民家の空き部屋をホテルのように簡単に貸し借りできるサービス「Airbnb」などです。

これらの企業は、デジタルの力によってこれまでになかった全く新しい産業を生み出しており、

その影響は製造業のみならず、流通業など、様々な産業を巻き込んだ、産業構造の変革を生み出して

います。

 

たとえば、UBERの新しさは、「タクシーの配車サービスであるにもかかわらず、車を1台も持たない

こと」にあります。

UBERでは、誰でも審査さえ通れば自宅のクルマを使って、好きな時間帯だけタクシードライバーに

なることができるのです。

ドライバーが、どの時間帯に、どの辺りにいれば儲かるかという情報もUBERが教えてくれます。

一方顧客は、UBERの提供するスマートフォンアプリを通して、これまでよりも割安で安全に、

快適にタクシーを使えるようになります。

 

たとえば、「乗り合い」「独り占め」など、利用方式を選ぶことができます。

また、あらかじめクレジットカードをUBER社に登録しておくことで、ドライバーとのお金のやり

取りをする必要もなくなります。

走行ルートも自分のスマートフォンアプリに表示されるので、見知らぬ土地で乗り込んで変なところに

連れ去られたり、不要なお金をとられる心配もなく、チップも不要な、とても明朗会計なサービスです。

利用後に、ドライバーを評価できることも重要です。つまり、利用前にはドライバーの評価がわかると

いうこと。評価の低いドライバーが担当することになった場合は、乗車前に別のドライバーに変更する

こともできます。

この例からわかるように、利用者にとってもドライバーにとっても、必要な情報は全てスマートフォンに

よって提供されていて、ドライバーはドライバー用スマートフォンアプリを、利用者は利用者用の

スマートフォンアプリを持っていればこれらのサービスを利用することができるのです。

UBER社は、クラウドサービスとしてこれらの機能を提供するだけなので、前述した通り、クルマは

1台も所有していません。

 

この例のように、デジタルの力によって仮想空間上で全てのビジネスを回す、つまり、商品やサービスの

開発から製造、販売、配信、最終顧客が受け取る体験に至るバリューチェーンの隅々にまでデジタルを

適用することを、「デジタライゼーション」といいます。

第四次産業については諸説ありますが、私はこの「デジタライゼーション」こそが、真・第四次産業の

核になると考えています。

さらに、デジタライゼーションの勝ち組企業の多くは、「人工知能」を利用して現実社会をシミュ

レートし、全く新たな価値を生み出そうとしています。

 

たとえば、UBERを参考にみてみましょう。

まず、リアルな世界を、デジタルの力でクラウド上にコピーします。実際のクルマや、顧客となる

ヒトは、デジタルで表現された地図上に配慮されます。

UBERはどのクルマがどこにいて、どういう状態なのかがわかるので、顧客がタクシーに乗りたいと

思った時、どのクルマをどのルートでどう動かせば、安くて早く、そして快適に目的地に向かうか、という顧客の満足度の最大化を、人工知能によってシミュレートできるのです。

その結果、一番適切なクルマを顧客のもとに向かわせるということを、現実社会で実行するのです。UBERは、こうした既存のタクシー業界に風穴を開けました。

デジタライゼーションを果たした企業にとってみれば、クルマも、家も、すべては「センサー」で

あり、「アクチュエーションするべきモノ」なのです。

デジタルの力だけで、既存の産業構造を大きく変革させ、新しい価値を生み出し、瞬く間に既存産業を

蹴散らす力さえ持つ、「デジタライゼーション」。この勝ち組企業は、UBERだけではありません。

デジタルの力によって、流通を大きく変えつづけている「アマゾン」や、ITでクルマの未来を切り

開いた「TESLA」など、そもそも既存の業界にはいなかった企業が、デジタルの力だけで既存の

事業者を脅かす存在となっているのです。

さらに、これらの企業の成長を見たスタートアップ企業が「同じビジネスモデルで扱うモノを変える」と

いう工夫を始めています。

 

たとえば、UBERがクルマを扱っているように、花の配達や、クリーニングの受け取り・配達をクラ

ウドで管理するといったサービスが北米を中心にどんどん登場してきているのです。

 

 

 

この続きは、次回に。

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