危機の時代 ジム・ロジャーズ ⑰
・自分の投資スタイルを身に付けよう
投資の世界では「流れに身を任せよ」や「トレンドを友にせよ」といった
格言も知られている。こうした言葉を信じる人も多いことだろう。
彼らはブームになっているものに飛びつくものだ。
しかし私はこうした流れに乗るのが苦手で、決してそうしない。
投資家として知っておくべきもう一つのことは、自分のスタイルを見つける
ことだ。
私は投資家として長いキャリアの中で、割安になっている投資先を見つけ、
何年もそれを所有するのが最善であることを学んだ。
誰もが自分の投資スタイルを見つける必要がある。
お金を稼ぐ方法はたくさんある。
自分独自の方法を見つけ、それを追求したほうがいい。
あなたが素晴らしい短期トレーダーなら、その手法を徹底的に研究して、
道を究めるべきだ。
偉大なことは小さいことから始まる。
それが成功の歴史だ。
投資だけでなく、人生において大事なことがある。
あなたが仕事を探しているなら、最も多く給料を払ってくれる会社ではなく、
自分にとって最適な仕事ができる会社を探した方がいい。
お金は後からついてくるものだ。
あなたに適した仕事を任せてくれる会社にいるならば、安い給料でキャリアを
始めても問題ではない。
あなたが優れているなら、上司や同僚がそれに気づき、きっと引き上げて
くれるだろう。
良い企業はみな、優秀な人材を欲しがっている。
あなたがお金を見つけるのではなく、お金の方があなたを見つけてくれるだろう。
物事が本当に得意な人は少ない。自分の能力を磨き、ほかの人にないような
専門性を身に付けようと努力した方がいい。
世界は物事があまり得意でない人であふれている。
歌でも、文章でも、リサーチでも、同じだ。
あなたが何かが得意であれば、世界があなたを見つけるだろう。
あなたが何かについて得意であれば、お金の方があなたを発見してくれる。
それでも、短期的なお金のために行動するという失敗をしないでほしい。
長期的な視野に立って行動すれば、あなたはより多くのお金を得ることができ、
大きな成功を収められる可能性が高い。
・私は道を見出そう。さもなくば道をつくろう
「私は道を見出そう。さもなくば道を作ろう」というラテン語の言葉もある。
カルタゴの英雄ハンニバルが、ローマを攻める際に、「象でアルプスを
越えるのは不可能だ」と言われた際にこう答えたとされている。
(編集注:ローマ時代の哲学者で劇作家の小セネカの作品の中で語られた言葉と
伝えられている。
16世紀の英国の哲学者で、法学者でもあるフランシス・ベーコンがこの言葉を
モットーとしていた)。
時代を超えて多くの人に愛されている格言だ。
まさに私はこの言葉を自分の子どもたちに贈りたい。
米国を代表する投資家では、ウォーレン・バフェットが有名だ。
彼は「世界のためにできる最善のことは、たくさんのお金を稼ぎ、それを
与えることだ」と語ったとされている。
しかし私は人々に、自分のお金をどのように使うべきかを教えるつもりはない。
他人にその人が持っているお金で何をすべきかを伝えるべきではないと
思うからだ。
もしウォーレンがお金をどう使うべきかを人々に伝えたいと思っているなら、
それは彼の考えがあるのだろう。しかし私は、自分のお金をどうするかは
その人の自由で、だれも口を出すべきではないと思っている。
それは傲慢に聞こえかねないからだ。
間違いを犯したとしても、人々は自分のやりたいことにお金を使ったらいい。
もしあなたが他の人に対して、手元にある資金で何をすべきかを伝えて
失敗すると、彼らはあなたを責めるだろう。
人々が間違いを犯すなら、そうさせた方がいい。
私は他人に対して、自分が稼いだお金で何をすべきかを決して言わないように
している。
・借り手にも貸し手にもなるな
私も借金をしたことがないわけではない。
「借り手にも貸し手にもなるな」という有名な格言がある。
シェイクスピアの悲劇「ハムレット」に出てくる言葉だ。
個人的なお金の貸し借りをすると、お金と友人の両方を失うことになる。
お金を借りるのは、相手に自分はお金を管理する能力がないと言っている
ようなものだ。
経済的に頼ったり、頼られたりする関係が生じるのは、人間関係において
良くない。だからお金を借りたり、貸したりしない方がいいのは間違いない。
私はお金を借りず、お金を貸さない。
私は2人の子供たちに、お金を使うより先に、節約することを知ってほしいと
思っている。それを学ぶことは本当に大事だ。
子供たちがお金をもらった時はどうすればいいのか。
私は娘たちに、「いったんお金を貯金したほうがいい」と伝えている。
そうできなければ、子供たちは普段からお金を使いたいと思っているので、
いつか問題が発生するだろう。だから、お金を使うのではなく、節約することが
大事だという基本をまず教えることが大事だ。
もちろん、子どもたちは、将来、そのお金を使うことができる。
ただし、自分が何をしているのかをきちんと理解し、お金の使い方を
コントロールできるようになった場合に限るべきだ。
この続きは、次回に。