ブランディングが9割 ㉔
✔ 優位性を保つカギは「情緒的価値」と「自己表現的価値」
商品を購入すると、その商品を使ったり、体験したり、経験したりする
ことで得る「目に見えない価値」があるのです。
売り手の中には、自分たちの仕事や商品の役割は「お客さんにモノを
売った瞬間に『利益を得る』という結果を持って終了」と考える人も
いるかもしれません。しかし、お客さんにとっては、買って使って体験
することで得ることのできる「利益」、つまり「顧客にとっての価値」が
あるのです。
この「顧客にとっての価値」とは、ブランドを構成する価値のことなの
ですが、主に「機能的価値」「情緒的価値」「自己表現的価値」の3つ
から成り立っています。
● 機能的価値(Functional Benefits)
機能的価値とは、商品やサービスが持つ機能的な特徴やスペック、または、
それによって得られるプラスの利益のことを言います。
速い、軽い、厚い、頑丈、便利、よく落ちるなど、多くは数値化することが
可能です。
(例)
インテル—高速なプロセッサー
アタック—洗浄力
● 情緒的価値(Emotional Benefits)
情緒的価値とは、商品やサービスを利用したり、体験したりして得られる
プラスの気持ち(ポジティブな感情)のことを言います。
格好いい、楽しい、高揚感、シンプルさ、高級感、安定感など、感情に
まつわることを指します。
(例)
ドン・キホーテ—-楽しさ、わくわく感
無印良品———–シンプルさ、洗練された
● 自己表現的価値(Self-expressive Benefits)
自己表現的価値とは、その商品やサービスを利用したり体験したりする
ことで得られる自己表現、自己実現感のことを言います。
その商品や理想的な自分に近づける、自信が持てるなど、自身の理想に
対する達成感などのことです。
(例)
スターバックス—都会的で洗練された気分になれる
アップル——クリエイティブになれる
機能的価値で競合との差別化を図るには、よほど機能的に優れた技術や
サービスでないと、優位性を保つことが難しいのです。
「自己表現的価値」というと、「高級ブランド=成功者」というイメージが
想起されるかもしれませんが、高級ブランドのことだけを示すものでは
ありません。アップルのノートPCを使うことで「クリエイティブな人や
デザイナーの気分になれる」という人もいるでしょう。つまり、その
ブランドを使うことで、どんな自己を表現することに役立ったか、という
価値を意味します。
・機能的価値だけでは差別化しづらい
ブランド戦略の大家と言われるデービット・アーカーは、ことのほか、
この情緒的価値と自己表現的価値の重要性を訴えています。
それは、先述した通り、機能的な側面では競合との差別化をすることが
難しいからです。
現時点でよほどの優位性があったとしても、それがなくなれば途端に、
違うブランドへ切り替えられてしまいます。
大事なことは、情緒的価値があるかどうかということです。
つまり、情緒的価値や自己表現的価値がないと、差別化できず、競合との
価格競争に巻き込まれてしまう可能性が高いのです。
何かのファンになったり、好きになったりするのは、ちょっとした気持ちや
感動があるからです。
このちょっとした感動がブランドと人をつなげ、強固な関係をつくるのです。
ですので、ブランドにとっては目に見えない、情緒的価値が重要になって
くるというわけです。
✔ ブランドにも人のような〝個性〟がある〜「ブランドパーソナリティー」
人に個性があるのと同様、ブランドにも個性があります。
そのブランドの個性のことをブランドパーソナリティーと呼びます。
「パーソナリティー」が「人格」を意味するように、ブランドパーソ
ナリティーは「ブランドの人格」と言ってもよいでしょう。
ブランドパーソナリティーはまさに個性であり、キャラクターであること
から、人がその個性を真似ることができないように、ブランドも真似る
ことができません。
強いブランドにはしっかりとした個性があり、ブランドパーソナリティーの
視点からしても、競合との差別化が非常に明確にされていると言えます。
自社のブランドのパーソナリティーがなければ、個性がなく特徴のない
ブランドとなってしまうでしょう。したがって、ブランドにとっては、
このブランドパーソナリティーを明確にして打ち出していくことがとても
重要になります。
この続きは、次回に。