ブランディングが9割 ㉝
・ブランド管理は、品質を管理することと同じ
私は、「ブランドを管理することは、品質を管理することにとても似ていて、
それと同じくらい重要だと思っています。
ブランドの管理は、品質管理のように人間の生命に関わることはなくとも、
失敗すればブランド自体の生命に関わってきます。
もし知らぬ間に、青やピンクのロゴのセブン-イレブンが出てきたら、
お客さんはセブン-イレブンがあることに気づかないかもしれません。
ブランド専門の部署が管理し、ブランドの責任者や管理部署が承認した
もの以外は、世に出ないようにしなくてはいけないのです。
これは、日本の印刷工場で現場立ち会いをしたときに聞いた話ですが、
ある超大手のヨーロッパ企業は、商品のパッケージを印刷する際、ロゴと
デザインがしっかり印刷されているかを管理するために、わざわざヨーロッパ
からその印刷所まで立ち会いに来るのだそうです。
わずかな色の違いも許さないという姿勢のもと、立ち会いをしてまで徹底的に
ロゴやデザインを管理しているのです。
やり過ぎと思われるかもしれませんが、統一感のあるブランドを築いて
いるところは、細かいところまで徹底してブランド管理を行っていると
いうことです。
✔ 多くの人を巻き込む「自分ごと化」させる〜
インナーブランディングの重要性
どれだけテレビや新聞などの広告を通じたコミュニケーションをした
としても、お客さんとの接点で従業員がブランドの「らしさ」と違う
ことをしてしまっては、ブランドを正しく理解してもらえません。
ブランディングにおいては、「受け手がどう感じるか」が重要です。
そして、ブランドづくりを成功させるには、ブランドに関わるすべての
人が、何が課題で何をすべきなのかを把握し、目指す姿を確認し、目標に
向かって行動できていることがポイントになります。
そこで必要なのが、従業員へのブランド教育、「インナーブランディング」
(インナーコミュニケーション)です。
これは「全従業員へブランドのビジョンや価値観を理解・浸透させ、行動を
促すための活動」のことで、インナーブランディングにおいては、単なる
商品説明とは異なり、課題や「なぜ今ブランディングを行っているのか」を
経営者が中心となって伝えることがとても大事です。
インナーブランディングの施策には様々あり、具体的には次のようなものが
あります。
・ブランドブック(社内向けにブランドコンセプトをまとめた冊子)の配布
・ブランドムービーの配信
・社内報、社内ブログの製作
・ワークショップの実施
・ブランドセミナーの開催
・ブランドアンバサダー(社内にブランドを広めるブランド大使)の設置
その他、イベントを開催したり、従業員向けのキャンペーンを実施したり、
オシャレなユニフォームに一新するなど、企業によってやり方は様々です。
上からの指示で強制的に実行するというよりは、従業員が楽しめて、自ら
やりたくなるような内容であることが望ましいでしょう。
・インナーブランディングを成功させるポイント
□ 経営層からの強い想いやメッセージの発信は必須事項
「経営層からの強い想いやメッセージの発信」は、インナーブランディ
ング成功のカギとなります。ただし、内容が強制や強要だとうまくいき
ません。あくまでも、従業員の心に変革をもたらすことを念頭に置いて
行うことが肝心です。
メールや社内WEBサイト、社内報などで文字のコミュニケーションを
行うことも大事ですが、会議や食事会など、従業員と直接会う機会を設け、
経営層から相手の心に訴えるように想いを伝えるとよいでしょう。
また、直接顔を合わせるという意味では、セミナーやワークショップも
効果的です。
私はこれまで、様々な企業のセミナーで「ブランドは何か」「なぜブラン
ディングに力を入れるのか」「今までの課題は何か」「課題解決のために
何をすべきか」といったことを話してきました。
また、ワークショップでは、「みなさんのブランドの『らしさ』って何
ですか?」と問い、一人ひとり考えてもらうようにしています。
こうした話を直接伝えることで、重要性がより深く伝わりますし、従業員の
方みずからが考えてみることで「自分ごと化」できる(「自分のこと」として
捉えられる)ようになるからです。
□ 配布物は読んでもらえるよう工夫を凝らす
ブランドブックは、そのブランドにとってバイブルになるので、社内浸透活動で
従業員に配布するのはとても効果的です。ただし、文字の割合が多すぎると
読んでもらえないかもしれないので、工夫を凝らすとよいでしょう。
ただし、担当者がどんなに魂をこめてブランドブックをつくり、それを従業員が
読んでくれたとしても、従業員のマインドがすぐ変わるわけではありません。
インナーブランディングは、従業員一人ひとりの心に訴えかけていく地道な
作業です。大変なことではありますが、従業員の心の変革なくしてブランドの
成功はありえません。
インナーブランディングを行っていると、費用対効果が見えづらいことから、
社内に様々な意見が出てくるでしょう。そのときは本音をぶつけ合い、
従業員の心にブランドの重要性を地道に訴え、よりよいブランドに育てて
いきましょう。
□ 映像でのコミュニケーションも心に刺さる
さらに、従業員向けにインナーブランディング用の動画を制作するという手も
あります。
映像や音声から伝わる情報は、特に若手スタッフの心には響きやすいかも
しれません。
この続きは、次回に。