リテールマーケティング ㊺
② セルフサービス販売とハーフセルフサービス販売
1. コストを引き下げるためのセルフサービス販売
商品の販売方法は、一般的に次の2つに大別できる。
① 百貨店や専門店のように高価格商品を中心とした品ぞろえで、スタッフ
(専門担当者)が個々の顧客に声をかけて商品の説明をしたり、あれこれ
奨めたりする対面販売方式。
② スーパーマーケットやコンビニエンスストアのように、低価格帯の
商品を中心とした品ぞろえで、原則としてアプローチせずに顧客に
自由に商品を選んでもらうセルフサービス販売方式。
経済センサスなどのデータを見るまでもなく、対面販売方式を主力として
きた専門店の数が減少し、百貨店もバブル経済崩壊後の売り上げ不振から
抜け切れていない状況が続いている。
人手をかける対面販売は、人件費などのコストが商品の価格に上乗せされる
こともあって、ある程度の粗利益が確保できる価格設定、および仕入を
しなければビジネスにならない。
低価格志向が定着した今日、人手をかけた高価格商品が敬遠されるのは
当然のことである。
そこで百貨店や専門店は、長年築き上げて来た販売形態を変えてまでセルフ
サービス販売方式に注目している。しかも、それを実施しようとしている
ことによって、セルフサービス販売のあり方も変わって来た。
台頭期のスーパーマーケットから普及し始めた従来のセルフサービス販売
方式は、まだ消費者の暮らしが豊かではない時代において、薄利多売政策を
展開するために導入された。つまり、ぎりぎりのコストを賄うために人件費も
できる限り削減しなければならなかったのである。
店舗の販売員がいっさいアプローチしないため、顧客はあたかも無人の売場で
一目を気にすることなく、自由に商品を選ぶことのできる販売方式であった。
時代が変わり、コンビニエンスストアの成功などにみられる今日のセルフ
サービス販売方式の普及は、消費者が豊かになったことが背景にある。
商品の価格の低さだけでセルフサービス販売方式が支持されるという事態を
変えてしまったのである。むしろ、核家族化や少子化などの社会の変化に
象徴されるように、家族や友人以外との接触を嫌う若者などを中心に支持を
広げてきたのである。
□ 経済センサス
経済構造統計を作成するために、総務省と経済産業省が共同で行う基幹
統計調査。全国のすべての事業所・企業を対象とする大規模な調査で、
国全体の産業構造を包括的に明らかにするとともに、各種統計調査の母
集団情報を得ることを目的とする。「基礎調査」と「活動調査」があり、
それぞれ5年ごとに実施される。
□ 台頭 たい‐とう【台頭/×擡頭】
1. 頭をもたげること。勢いを増してくること。「改革派が―する」
2. 上奏文などで、貴人の名やそれに関する語の出てくるとき、敬意を
表して改行し、一段高く書くこと。
この続きは、次回に。