リテールマーケティング ㊿-1
(b) 目で見ることはできないが、心理的な満足度を味わうことができるもの
<例>
鮮魚や野菜売場などにおける「産地直送」品の販売は、その商品に対する
付加価値を高めることができる。顧客は自宅に居ながらにして遠い産地
(行ったことのない場所)と変わらない味覚を楽しむことができ、多少の
価格訴求では得られないような満足感が得られる。
近年、大手小売業のみならず、商社なども欧米の最新小売業の視察や研究に
取り組んでおり、その結果、日本国内にはさまざまな新しい店舗形態が
持ち込まれ、日本流にアレンジされながら次々にオープンしている。
そうした新店舗形態に共通した傾向をみると、流通の合理化などによる
価格訴求をポリシーとしたものが少なくない。しかし、日本ではただ安い
だけが特徴の小売店は通用しない。それは、決して価格訴求業態ではない
コンビニエンスストア(CVS)がいまだに売上高および店舗数ともに成長を
続けていることからもうかがえる(第1部「商品カテゴリー別小売業の販売
状況」参照)。
一般的に、CVSの成長の要因としては、①24時間営業、②近距離立地、
③フルラインのライフスタイル提案型商品構成、④災害時などのライフ
ライン、などが指摘される。しかし、それだけではない。
決められたタイムテーブルに沿った定期配送、売れ筋商品主体の品ぞろえ
などのストアオペーレーション、さらに店舗のクリンリネスやフレンドリー
サービスなどの基本原則を貫いているからである。
深夜の店頭でのこうしたサービスは、何よりのプロモーションともいえる。
3. 顧客に焦点を絞ったプロモーションを
続いて、顧客に焦点を絞ったプロモーションの留意点をみていく。
① エブリディ・バリュープライス(EDVP)訴求
いつでもあらゆる商品を消費者が楽しみながら納得のうえ購買できるように、
地域に根ざした公正価格を設定することが大切である。
そのために、POP広告などを用いて、顧客に商品の価値と価格の公正さを
訴求する必要がある。
② シーズン訴求
クリスマスやバレンタインデーなどの年間イベント対策は当然必要である。
特に、学校行事(学園祭や運動会など)や地域の催事に合わせたプロモー
ション企画を忘れてはならない。
③ 生活提案
日常生活に欠かせない定番コーナーづくりによって、きめ細やかなプロ
モーション企画を励行する。また健康生活のシーンであれば便秘や肥満、
虫歯予防などの対策も、それぞれ企画した売場づくりが必要である。
④ 新商品訴求
新商品は、カラフルなPOP広告に載せて顧客に知らせる習慣を身につける
ことが大切である。特に、用途や機能面での革新性を強調して訴求すると
効果的である。
表5-1 セールとブロモーションの比較
【マーケティング特性】
セール—一過性マーケティング→特売セール期間だけ、特定顧客だけの
来店しか見込まない。
プロモーション—継続性マーケティング→その都度、付加価値が得られる
ため、再来店率が高まる。
【訴求目的】
セール—価格訴求→競争店よりいかに安くするかという訴求だけに終始する。
プロモーション—価格訴求→顧客がベネフィットを感じる情報や価値観を
提供する。
【購買意義】
セール—義務的購買→価格だけが選択基準のため、顧客は生活維持の
目的で義務的な行動となる。
プロモーション—楽しむ購買→自らの生活を彩り、豊かにする情報が
得られるため、顧客は楽しみながら買物ができる。
【経営の安定度】
セール—短期的経営手法→特売を行わなければ来店しない顧客を多く
抱えているため、経営が不安定隣、顧客の信頼感が薄れる。
プロモーション—中長期的経営手法→基本政策が変わらないため、顧客は
安心して来店でき、経営が安定する。
この続きは、次回に。