実践するドラッカー[思考編] ⑭
A lesson from P.F.Drucker
∵ 自己刷新を促す問い
私が一三歳のとき、宗教の先生が「何によって憶えられたいかね」と
聞いた。(中略)
今日でも私は、いつもこの問い、「何によって憶えられたいか」を
自らに問いかけている。これは、自己刷新を促す問いである。
自分自身を若干違う人間として、しかしなりうる人間として見るよう
仕向けてくれる問いである。
『非営利組織の経営』—-p.219,p.220
ドラッカー教授が自己刷新の道具として用いた言葉が、少年時代にフリー
グラー牧師に教わった「何によって憶えられたいか」です。
牧師はその一言を発した後、このように続けました。
「答えられると思って聞いたわけではない。でも五○になっても答えら
れなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」
当時の平均寿命は五○歳そこそこですから、要は死の間際にこの問いに
答えられるか、ということです。このエピソードは六○年ぶりの同窓会でも
話題になったとのこと、生徒たちによほどのインパクトを与えたのでしょう。
ちなみに、ドラッカー教授は、ある歯科医に同じ問いかけをしたところ、
こういう答えが返ってきたそうです。
「あなたを死体解剖する医者が、(歯を見て)この人は一流の医者にかかって
いたといってくれることだ」
では、どうすれば「憶えられる」のでしょうか。
第一に、人とは違う何かをもつこと。違いを生み出すこと。
第二に、違いを生み出すために、日々実践して成果をあげ続けること。
人は成果を出している人を記憶にとどめるのです。
第三に、人は他人に影響を与えることで初めて憶えられます。
「あの人のおかげ」というとき、長く記憶にとどめられるのです。
「何によって憶えられたいか」。
この問いが、ドラッカー教授が常々いう「強みを生かし、卓越性を磨く」
ことに通じているのは、間違いありません。
実践シート⑥
あなたの所属する組織のミッションは何ですか。
そこであなたがなすべきことは何ですか。
——-hint——
● ミッションとは、使命、目的、理念、存在意識、社会的役割などと
ほぼ同じ意味。
● ミッションとなすべきことは、同一線上で考える。
実践シート⑦
あなたの卓越している点(分野)、あるいは、これから卓越性を追求しようと
している点(分野)を挙げてみましょう。
——-hint——
● 卓越した分野とは、他人に評価されている得意分野(p.57)
● これからの卓越性とは、今後伸ばしていきたい得意分野
実践シート⑧
あなたが考える内なる成長、人格や人の器を磨くための方法を挙げて
ください。
——-hint——
● 毎日続けている小さなこと、人のために行っていることなど。
実践シート⑨
過去1年を振り返り、「予期せぬ成功」を挙げてください。
——-hint——
● 他人には難しく自分は簡単にできたこと、あるいは、運がいい・ツキが
あると感じたことなど(p.68)
実践シート⑩
いま、あなたは何によって憶えられたいですか。
——-hint——
● 憶えられたい分野を決める。強みを生かせる分野で憶えられる(p.77)
この続きは、次回に。