実践するドラッカー[思考編] ㊲
Chapter5∵集中する力
成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。
『経営者の条件』—-p.138
一般的に「集中」とは、集中力の意味で使われることが多いですが、
経営の世界では、事業の「選択と集中」など、あるものを一つ選び、
そこに経営資源を投入して一心に行うという意味にも使われています。
この二つの集中の違いは、「時間の長さ」です。前者の集中は多くが
瞬間的で、長くてもせいぜい一日です。後者の集中は、持続的です。
ドラッカー教授のいう「集中」の意味は、後者、つまり一つのことを
継続して行うという意味のものです。
集中は、時間を管理すること、貢献に焦点を合わせること、強みを生かす
ことといった他の成果をあげる能力を差し置いて、筆頭に挙げられています。
私たちが最優先で身につけるべき「集中する」という能力について考えて
いきましょう。
A lesson from P.F.Drucker
∵集中のインプット面
時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなる。
『経営者の条件』—-p.139,p.140
集中を考えるとき、アウトプットとインプットという二つの要素が重要に
なります。アウトプットとは、成果のことです。
インプットとは、成果を得るために投下する資源のことで、主な資源は
時間と知識です。
成果は、資源投下という行動の結果、生まれます。単に知識が頭の中に
あるだけでは何も起きません。ここで意識しなければならないのは、
「行動の量と質」です。どれだけ行動したか、どんな行動をしたかです。
行動の量については、何といっても時間の確保が欠かせません。
当たり前のことですが、時間があればあるほど行動量は多くなり、それは
成果の大きさや量に直結します。
一方、質を決めるのは、個人がもつ知識や能力です。深い知識があれば
さまざまな行動をとることが可能になりますし、あるいは、より短時間で
成果をあげることもできます。
ですから、なるべく知識を広く深く身につけていきましょう。
それはいまの仕事をより早く、的確に行うための投資でもありますが、
知識を広げれば、未知に仕事を手がけられるようにもなります。
やれる仕事の数と種類が増えていきます。
時おり、現在の手持ちの資源の使い方だけでなく、未来の資源をつくる
投資も意識してください。
A lesson from P.F.Drucker
∵集中のアウトプット面
なされるべきことはほとんど常に複数である。しかし成果をあげるには
手を広げすぎてはならない。一つのことに集中する必要がある。
『経営者の条件』—-p.4
成果をあげるためには、成果の形をはっきりさせなければなりません。
そうでなければ、どんな資源がどれくらい必要になるのか、見当がつか
ないからです。
具体的にどんな知識や能力を問われるのか、どれぐらい時間がかかりそうか。
到達すべき場所が曖昧なのに、むやみに車を走らせるのは、燃料の無駄
づかいです。また、同時に複数の成果を目指すのもナンセンスです。
途中で混乱するのは目に見えていますし、資源が分散してしまい、余計な
時間もかかります。あれこれ手をつけても、どれも中途半端に終わるのが
関の山。狙いを一つに定めるべきです。
成果をあげる人は、限りある資源を一点に極限まで集中させて使える人です。
目標地点をこれと決めたら、わき目も振らずにひた走る。
到達したら、また次の成果に向かって資源を集中させる。
結局のところ、これが最も多くの目標地点に到達できる、唯一の方法なの
です。
ほとんどの場合、最も重要なことは一つです。
その一つに集中することにすべてを懸けてください。
この続きは、次回に。