お問い合せ

実践するドラッカー[行動編] ⑰

A lesson from P.F.Drucker

 

∵最善の解決策を選ぶ

 

意思決定は本当に必要かを自問する必要がある。

何も決定しないという代替案が常に存在する。(中略)

よい外科医が不要な手術を行わないように、不要な決定を行ってはならない。

『経営者の条件』—-p.205


 

反対意見は組織の中にこびりついた固定観念を揺さぶり、想像力を刺激し、

選択肢を広げてくれます。豊富な選択肢を十分に吟味し、最善の一つに

絞り込んでいく際に気をつけるべきは、以下の三つです。

 

・満たすべき必要条件を吟味する

・選択肢は全て検討し、得られるものと付随するリスクを全て天秤にかける

・優先順位と劣後順位を考え、何を行うべきかを明らかにする

 

大切なのは、機会の最大化を第一に考えることです。

リスクは避けるべきものではなく、コントロールすべきものです。

そのうえで、最後にもう一度考えましょう。

その意思決定は、本当に必要でしょうか。

何もしなければ事態が悪化してしまうなら、あるいは、急がなければ機会が

消滅してしまうのなら、ただちに決定し、行動を起こさなければなりません。

しかし、放っておいても大した問題が起きそうもないのであれば、手を

つけないほうがよいこともあります。

不適切な決定は、組織を混乱に陥れます。

もちろん、たいした理由もなく決定を先延ばしにするのは論外です。

 

 

A lesson from P.F.Drucker

 

∵フィードバックを行う

 

決定の基礎となった仮定を現実に照らして継続的に検証していくために、

決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければならない。

決定を行うのは人である。人は間違いを犯す。最善を尽くしたとしても

必ずしも最高の決定を行えるわけではない。

最善の決定といえども間違っている可能性もある。

そのうえで大きな成果をあげた決定もやがて陳腐化する。

『経営者の条件』—p.185,p.186


 

成果をあげるためには、意思決定の質を日々向上させる必要があります。

フィードバックを行う仕組みを、意思決定の中に織り込んでください。

具体的には、次のポイントがあります。

 

・決定したことを書きとめておく

・行動の結果を振り返る

・事前に期待した成果と、事後の成果を比較する

・そこから行動を修正するための情報を得る

・次の行動に反映させる

・決定と成果の傾向を把握する

 

ドラッカー教授は、何かを始めるときや意思決定を下す時は、決めたこと、

そしてどんな結果を期待するのかを必ず書きとめておくこと、と述べて

います。

教授自身も、次の一年で何をなすべきかを決める際、必ず決めたことを

文書で残し、数か月は触れないようにするということです。

しばらく寝かせてから見ると、新たな発見があるからです。

次に、行動によって得られた結果を確認します。

果たして、どのような成果が出たでしょうか。振り返ってみてください。

その際、書きとめておいた事前の期待と、実際の成果を比較します。

こうして得られたことは確実に次のサイクルに反映すること、そして次なる

意思決定についても、このサイクルを回すことを忘れないでください。

ドラッカー教授は、あらゆる決定についてフィードバック分析を行なって

いますが、三○年続けていてもなお、驚くことがあるそうです。

自分の行動や考えの中で、最善と思ったことがうまくいっておらず、一方で、

ほとんど注意を払っていなかったものが素晴らしい成果につながっている

ことが明らかになるのです。

そうして比較検討を行いながら、成果の達成度、行動の質や量などの情報を

洗い出していきます。そのうえで、修正すべきことを明らかにします。

これが次の行動に生かすべき改善点です。

せっかく得た貴重な情報も、実際に使わなければ意味がありません。

思いつきや勢いに任せるのではなく、予め、一定期間ごとに決定と行動を

修正する仕組みをつくっておくことが大切です。

環境は刻一刻と変化します。当初の設定の間違いが発覚したり、前提条件の

変化に気づいたりしたとき、柔軟に行動を変え、場合によっては実行を

中止できるかどうか、これは、意思決定の死活問題ともなります。

フィードバックは意思決定の質を向上させるのみならず、重大な危機を

回避する点でも有用です。

 

 

A lesson from P.F.Drucker

 

∵決める勇気

 

決定を行う準備は整った。(中略)ここにおいて、何を行うべきかは明らか

である。決定はほぼ完了した。しかし、まさに決定の多くが行方不明に

なるのが、このときである。(中略)

決定を延ばしすぎてはならない。数日、せいぜい数週間までである。

『プロフェッショナルの条件』—-p.167,p.168


 

淡々と意見を出し、ある基準で選び、関わる人を決め、行動に移す。

感情に揺さぶられない技術的なプロセス、それが意思決定です。

しかし、最後の「決める」段階にいたって、心理が大きく影響します。

なぜなら予測不能な未来に貴重な資源を投下するという、大きなリスクが

伴うからです。

この期に及んで何か心に引っかかることがあれば、原因を調べて見るべき

でしょう。しかし、ただ分析だけを続けていても答えは出ません。

決定を引き延ばすのは数日、長くとも数週間が限度です。

必要なのは、勇気です。基準は「いま何が一番重要なのか」に尽きます。

意思決定とは、他を切り捨て、最も重要なことに集中する勇気です

(『実践するドラッカー[思考編]』第5章参照)。

言い換えれば、意思決定の技術とは、集中の技術でもあります。

ドラッカー教授はいわく、「集中こそが成果をあげる最高の秘訣」です。

 

実践ノート③

 

あなたがいま、解決したい問題や課題を挙げてください。

 

—-hint—-

 

■ それは真の問題がどうか。環境変化など直接解決できないものは解決

 すべき真の問題ではない。

■ その問題を課題にできるかどうか。課題とは、問題解決の方法があるもの。

 

実践ノート④

 

仕事を通じて叶えたい目標や夢を挙げてください。

 

—-hint—-

 

■ 現状の延長線上ではなく、独自性や新しさをもたらすものになっているか。

■ その目標や夢を叶えるにふさわしい機会は得られるか。

 

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る