実践するドラッカー[行動編] ⑱
Chapter3∵目標が成長を促す
目標なるものは鉄道の時刻表ではない。それは航海のための羅針盤である。
それは目的地にいたる航路を指し示す。
(『現代の経営<上>』—p.80)
経営にも人生にも、鉄道と同じように到着地がありますが、決められた
レールの上を走るのではないというところが最大の違いです。
むしろ航海と似ていて、嵐を避けて航路を変更し、濃霧では慎重に速度を
落とし、環境に柔軟に対応しながら到着地を目指します。
しかし、変化が続けば進むべき方向を見失うこともあるでしょう。
そこで必要なのが、羅針盤です。
目標は経営や人生の羅針盤に当たる道具であり、目的地にたどり着けるか
どうか、この道具を使いこなせるかにかかっています。
目標は、さまざまな状況下で私たち自身を索引するものです。
自己目標管理を身につけ、自らの成長を促しましょう。
● 羅針盤
実はどちらも同じ物で、場合によってはコンパスや単に磁石と呼ばれる事も
あります。また、人生の進むべき道や進路などを「羅針盤」と喩える表現も
多く、例えば「迷った時は己の羅針盤を頼りにする」といった感じです。
方位を示す事から、人生の方向も教えてくれると期待する「羅針盤」に
ついての解説となります。2021/06/06
A lesson from P.F.Drucker
∵目標は自ら管理する
自己目標管理を採用している組織は多い。しかし、真の自己管理を伴う
自己目標管理を実現しているところは少ない。
自己目標管理は、スローガン、手法、方針に終わってはならない。
原則としなければならない。
『マネジメント<中>』—-p.86
教授が常々述べているように、知識労働者は第三者が管理、監督する
ことはできません。知識や意欲など、目に見えないものを源泉に成果を
あげるからです。自己目標管理もまた、自ら考え、行動し、修正し、
完結するより他はないのです。
目標管理は、支配による管理から、自らの動機に基づく管理に転換すべき
だというのが、ドラッカー教授の考えです。
これこそ、MBO(Management by Objectives and Self-control)の真髄なの
です。組織や上に立つものが目標を与え、その達成を管理するのでは
ありませんし、ましてや、目標を支配の道具に使ってはなりません。
マネジメントとは、組織と個人の目標のベクトルを合わせ、一人ひとりに
貢献を促し、束ね、成果をあげることだからです。
● MBO
MBOとはManagement by Objectives(目標による管理)の略で、日本では
「目標管理」とも呼ばれます。 個人またはグループごとに設定した目標の
達成度を個人で管理する方法で、経営学者ピーター・ドラッカーによって
提唱されました。
● ベクトル
ベクトルとは、「大きさと向きを持つ量」を意味する言葉です。
物事や考え方の向いている方向などを指し示す時に使われ、抽象的な意味も
持っています。ベクトルは分野ごとで意味や使われ方が異なるので注意
しましょう。
この続きは、次回に。