「人を動かす人」になれ! ㉖
29.自信をつけた者は「踏みつけ」、自信のない者には「感動」を与えよ
人づかいの下手な管理者というのは、部下との接し方が本来やらなくては
ならないものと正反対になっていることが多い。
たとえば、仕事に対する自信が生まれ、十二分の成果があげられるように
なった部下を、チヤホヤして甘やかす。反対に、ミスや失敗をして自信を
失いかけている部下や、まだ自分のやり方に自信が持てないでいる部下を
ボロクソに叱ったり、無能呼ばわりをする。
この結果がどうなるのかといえば、自信を持った部下はチヤホヤされて
自信過剰となり、新しいことに挑戦しようという意欲も削がれて、結局は
ダメになってしまう。一方の自信を失いかけている部下、まだ自信が持て
ないでいる部下には、ガンガン文句をいったり、やることなすこと注文を
つけたりするので、ますます自信を喪失させてダメにしてしまう。
そして、こんな管理者ほど「部下のできが悪い」「部下が育たない」などと
嘆いている。わたしは、これらははっきりいって犯罪行為にも等しいと
思う。
人を動かす秘訣は、麦踏みと同じ要領だと考えればよい。
すなわち、麦がしっかりと根を張りはじめたら、踏みつけてさらにたく
ましくする。具体的には、新しいテーマを与えてどんどんチャレンジさせ、
従来とは異なる可能性を引き出し、より大きな自信をつけさせてやる。
本人の成長のためにという気持ちさえベースにあれば、少々叱ろうが、
難問を与えようが、必死になってついてくるはずである。
だが、まだ充分に根が張っていない麦の芽を踏みつけてしまうと、すぐに
腐らせてしまうことになる。かといって、時間さえ経てば自然に根が張る
というものではない。麦には肥料を与えないといけないのとまったく同じで、
人には感動、感激という肥やしをやることで、自信というたくましい根が
張るのである。
先にも述べたが、小学校四年生の理科の時間に、コイルを巻いて簡単な
モータをつくる実験で、わたしのつくったモータがクラスで一番よく回った
ので担任の先生がえらく褒めてくれた。この感動以来、わたしの頭のなかに
モータという機械がこびりついて離れなくなった。
また、高校時代に弁論大会で優勝して、クラスメート全員に祝福された
感激のシーンは、いまでもわたしの脳裏に焼きついていて、これまでに
挫けそうになったときには、必ずそのことを思い出した。
人づかいに自信のない管理者は、まず部下と感動、感激を共有するところ
からはじめるべきであろう。
● 自信過剰
自信を多く持ちすぎること。 本来の実力や地位などを見誤り、
自ら過大評価していること。 自分を過信していること。
この続きは、次回に。