「人を動かす人」になれ! ㉚
33.大きな成功体験には大きな報酬を
成功体験がその後の社員や部下の行動や考え方に大きな影響を及ぼすのは、
再三再四、述べてきた。しかし、ただ成功体験を味わいさえすれば良いと
いうものではない。やはり、この体験に成功報酬が直結していることも
非常に重要なポイントとなる。
わが社は、早くから能力給中心の賃金体系を採用し、給与総額に占める
年齢給などの割合は、他社と比べるとずいぶん低くなっている。
能力給という面から見ると、現在は入社一○年で約二倍、入社二○年で
五倍ぐらいの開きがあっても当然だと考えている。だが、これは社員の
充分な納得が必要になるので、急激にではなく、徐々に改善していきたいと
思っている。
給与面については、若い社員の意識はかなり変わってきているが、これ
まではどちらかといえば、金銭を前面に出して云々するのはタブー視
される傾向にあった。しかし、世界の中で競争していこうとすると、覆い
隠してばかりはいられない。もちろん、会社に対する帰属意識などの違いが
あって一概にはいえないのだが、総じて欧米企業などに比べると日本の
成功報酬はかなり見劣りがする。
つまり、相手が毎日ステーキを食べているのであれば、こちらも同じものを
食べ、ライバルが庭つきの家に住んでいるのであれば、われわれもそれに
合わせていかなければ、土壇場での勝負になったとき少なからず影響が
出てくるだろう。また、優秀な人材や頭脳が外資系に流出するなど、今後
さまざまな問題が噴出してくるのは必至である。
そこで、賃金の全体的な底上げを図るなどで、金銭的にも恵まれた環境を
整備すると同時に、成功報酬に対する考え方も大きく転換させていくことが
重要となる。
そうした経緯で一九九六年にわが社が導入したのが「利益貢献大賞」である。
これは、社員が新製品の開発、新規開拓、あるいは創意、工夫、改善の
ための実践や提案を行って、会社の利益に貢献したときに、その都度利益に
応じて報奨金を支給し、表彰する制度だ。
ちなみに報奨金の金額は、「ダイヤモンド特別賞=一○○○万円」「金賞=
五○○万円」「銀賞=三○○万円」「銅賞=一○○万円」となっている。
このように成功体験をよりダイレクトに報酬に結びつけていくことも、
社員のやる気、意欲を喚起するための要素になってくるだろう。
● 再三再四
何度も何度も。たびたび。▽「再三」は二度も三度もの意で、何度も、
たびたびの意。「再三」を強めていう語。
● 云々(うんぬん)
云々は云が繰り返されているわけですから、「ものをいう。 そしてまた、
ものをいう」という状況を指しています。
そこから転じて、云々は主に、「とやかくいうこと」「あれこれ議論
したり批評すること」という意味で用いられたり、引用文や語句のあとを
ぼかしたり省略したりする際に「以下略」の意で用いられます。
2019/07/10
● タブー視
不可侵とされているエリア、または、ものごと。
● 不可侵
おかすことのできないこと。また、侵略を許さないこと。
● 帰属意識
「帰属意識」は、特定の組織や集団に属しているという「意識」のことを
指します。企業においては、社員のなかに芽生える、組織の一員として
「集団に所属している」「仲間である」といった考え方です。
2021/05/14
● 噴出
狭いところから強い勢いでふき出すこと。また、ふき出ること。
「火口から水蒸気が―する」
この続きは、次回に。