「人を動かす人」になれ! ㉛
34.加点主義の風土がやる気を生み出す
人間はしばしば失敗する。会社経営はこれを前提にしなければ、社員の
やる気やチャレンジ意欲を喪失させてしまうことになる。
たとえば、幹部社員が提案を行って積極果敢に新しい事業に取り組んだ。
だが、周囲の状況、環境も芳しくなく結果的に事業に失敗し、会社も
少なからず損害を受けてしまったとしよう。このとき、この幹部社員に
対する評価のやり方は大きく二つに分かれる。
一つは、失敗を汚点だととらえたマイナス評価、すなわち減俸や降格を
行うことによって幹部社員の責任を徹底的に追求するやり方。
もう一つは、新規事業を提案したこと、そして先頭に立って新規事業に
取り組んでいった積極性の二点をプラス評価し、事業の失敗については
多少の叱責はあっても、お咎めは一切なし。それよりも事業に失敗した
原因をすみやかに究明し、教訓として残す。失敗した幹部社員には、会社に
貴重な教訓をもたらした功績を認めて、再チャレンジする権利を与える。
前者は減点主義、後者は加点主義と呼ばれているが、もちろんわが社の
場合は後者。それも徹底した加点主義を貫いている。評価はまずゼロから
スタートし、わが社の三大精神に則って仕事に取り組んだり、行動した
ときにプラス評価が行われる。何もしない、いわれたこと以外はやらない
のであれば、評価はいつまで経ってもゼロのまま。
そして、一度カウントされた得点は減点することはない。減点主義を
とれば、何もしない社員や、いわれたこと以外はやらないという社員の
方が、積極的に仕事に取り組んで失敗した社員よりも、はるかに高い
評価になる。これほど理不尽なことはない。
また、減点主義を採用している企業の多くが、「いい出した者が損を
する」体質になっているケースが多い。どういうことかといえば、部下が
前向きな提案を行ったとすると、上司は賛成するが責任はかぶりたくない
からフォローなどはしない。そして、成功すれば手柄は上司が独り占めし、
失敗すれば部下は責任だけを押しつけられる。
こうなるのは上司の個人的な問題があるというよりも、システムそのものに
欠陥があるからだ。
こんな風土のなかでは、頑張って新しいものをつくり出そうとか、みんなで
協力しあってもっと大きな目標にチャレンジしようといった雰囲気は
生まれてこない。それどころか、水面下での足の引っ張り合いが横行する
だけだ。システムの不備、これこそ経営者の重大な責任問題であろう。
● 積極果敢
意気込みがあり積極的で、決断力や実行力にすぐれていること。
● 叱責
「怒る」は、腹をたてて相手に注意する意なので、「優しく怒る」とは
いえない。 「叱咤」は、大声をあげて叱る、あるいは叱って励ますこと。
「叱責」は、責任者が下の者の失敗や過ちをきつく非難すること。
「譴責」は、職務上の過失などで責めとがめること。
● お咎め
「お咎め(おとがめ)」が適切。 「咎める」は、相手の過ちや罪を指摘
して非難すること、また、不審な人物を呼び止めることで、「お咎めなし」は、
目上の者から、または法的に、何の罪にも問われないことをいう。
2020/05/27
● 教訓
教えさとすこと。また、その内容・言葉。「―をたれる」「―を得る」
● 理不尽
道理をつくさないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。
「―な要求」「―な扱い」
● フォロー(follow)
1. 足りないところや仕損じたところをあとから補うこと。
「初心者をベテランが―する」
2. 一段落したあともさらに追い続けたり、何かことがあれば処置したり
すること。「停戦後の経過を―する」
この続きは、次回に。