ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」⑧
□ 機会に焦点を合わせる
問題ではなく、機会に焦点を合わせることが必要である。もちろん問題を
放っておくわけにはいかない。隠しておけというわけではない。
しかし問題の処理では、いかにそれが重大なものであろうとも、成果が
もたらされるわけではない。損害を防ぐだけである。
成果は機会から生まれる。
まず何よりも、変化を脅威ではなく機会としてとらえなければならない。
組織の内と外に変化を見つけ、機会として使えるかどうかを考えなければ
ならない。特に次の七つの状況を精査しなければならない。
(1) 自らの組織と競争相手における予期せぬ成功と予期せぬ失敗
(2) 市場、プロセス、製品、サービスにおけるギャップ(19世紀には、
製紙業はパルプにならない部分、つまり木の10%以外の部分は
捨てていた)
(3) プロセス、製品、サービスにおけるイノベーション
(4) 産業構造と市場構造における変化
(5) 人口構造における変化
(6) 考え方、価値観、知覚、空気、意味合いにおける変化
(7) 知識と技術における変化
問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。
ほとんどの組織の月例報告が第一ページに問題を列挙している。
しかし、第一ページには機会を列挙し、問題は第二ページとすべきである。
よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析し
その利用の仕方を決めてからにすべきである。
機会に焦点を合わせるには人事が重要である。一流の人材に、問題では
なく機会を担当させなければならない。
そのための方法の一つが、半年に一回、機会のリストと仕事とのできる者の
リストをもち寄ることである。それらのリストを二つの大きなリストに
まとめる。そして最大の機会を最高の人材に担当させる。
ちなみに日本では、これが企業や官庁の人事の考え方の基本である。
日本の強さの鍵の一つはここにあった。
● 列挙
並べあげること。一つ一つ数えあげること。「問題点を―する」
この続きは、次回に。