お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊲

もちろん最高の意思決定期間として機能し日常の業務にはまったく関与

しないというデュポンやスタンダード・オブ・ニュージャージーの取締役会

など、会議が目的である特殊な機関は別である。

この二つの会社では、相当前から、取締役は取締役会への出席以外には

何をすることも許されていない。これはたとえ空いた時間においてで

あっても、裁判官が弁護士の兼任を許されていないのと同じ理由である。

 

原則として、会議への出席が、エクゼクティブの時間の多くを要求する

ようになってはならない。会議の過多は職務の組み立て、組織の単位に

欠陥があることを示している。

例えば一つの仕事や組織単位に属すべき仕事がいくつかの組織単位に

振り分けられていること、責任が分散され情報が必要な人間に与えられて

いないことを示す。

第四に、情報に関わる機能障害からくる時間の浪費がある。

 

ある大病院の事務長は、長年の間、ベッドの空きを探す医師からの電話に

応えてきた。入院窓口がベッドの空きはないと断言しても、この事務長は

たいてい探し出した。

患者の退院については病棟の看護師が知っていた。退院患者に勘定書を

渡す会計窓口も知っていた。だが入院窓口は、患者の退院を直ちに知ら

される体制になっていなかった。入院窓口には、患者の大部分が昼前に

退院しているにもかかわらず、夕方五時のベッド調べ後の数字がいくように

なっていた。天才でなくともこの状況は簡単に改善できた。

病棟の看護師から会計窓口に回される伝票のカーボンコピーを一枚増やし、

入院窓口に回すだけのことだった。

 

さらに悪く、しかもよく見られるのが不適切な情報である。

 

多くのメーカーにおいて、現場の人間は翻訳しなければ使いものになら

ない生産関係の数字に悩まされている。

それらの数字が経理専用の平均値だからである。

現場で日常業務に当たっている人たちは、平均値など必要とせず変動値を

必要とする。そのため彼らは、必要となるデータを得るために毎日何時間も

費やしている。あるいは内々の経理システムをつくっている。

だが経理部にはすべての情報が整っている。問題は、どのような数字が

欲しいかということを誰も経理にいわないことにある。

 

システムの欠陥や先見性の欠如、人員の過剰、組織構造の欠陥、情報の

不全など、時間の浪費を招くマネジメント上の問題は直ちに改善する必要が

ある。もちろん粘り強い努力を要するものもある。だが成果は大きい。

特に時間に関わる成果が大きい。

 

この続きは、次回に。

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