ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+62
□ 意見の不一致を必要とする
成果をあげるエグゼクティブが、教科書のいうような意見の一致を無視
して意見の不一致を生み出すのはこのためである。
エグゼクティブが直面する問題は、満場一致で決められるようなものでは
ない。相反する意見の衝突、異なる視点との対話、異なる判断の間の選択が
あって初めて、よく行いうる。したがって、決定において最も重要なことは、
意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということで
ある。
スローンはGMの最高レベルの会議では、「それではこの決定に関しては、
意見が完全に一致していると了解してよろしいか」と聞き、出席者全員が
うなずくときには、「それでは、この問題について異なる見解を引き出し、
この決定がいかなる意味をもつかについてもっと理解するための時間が
必要と思われるのでさらに検討することを提案したい」といったそうで
ある。
スローンは直観で決定を行う人ではなかった。意見は事実によって検証
すべきことを強調していた。しかも結論からスタートしそれを裏づける
事実を探すようなことは、絶対に行ってはならないとしていた。
その彼が、正しい決定には適切な意見の不一致が必要であるとしていた。
大きな成果をあげたアメリカの大統領はみな、それぞれ意見の不一致を
生み出すための自分なりの方法をもっていた。
リンカーン、セオドア・ローズヴェルト、フランクリン・ローズヴェルト、
ハリー・トルーマンのいずれもが自分なりの方法をもっていた。
彼らはみな、「この決定がいかなる意味をもつかについてもっとよく
理解するため」に意見の不一致を生み出していた。
ワシントン大統領が、対立を嫌い閣僚内の一致を求めていたことは有名で
ある。しかしその彼も、重要なことについてはハミルトンとジェファー
ソンの二人に意見を聞くことによって必要な意見の相違を生み出していた。
この続きは、次回に。