お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」⑭

□ 製品を定義する

 

業績をもたらす領域についての分析は、製品とサービスの分析から始める

べきである。特に、製品の定義から始めるべきである。

経験豊かな経営幹部ならば、製品の定義に関わる問題の重要性については

十分理解している。したがって、業績をもたらす領域の分析は製品の分析

からスタートすることが賢明である。

まず、いかなる企業にも、ほかの製品の販促品や付属品という本業の主力

製品ではない製品がある。それらの製品に対して、主力製品と同じ基準を

適用することは間違いをもたらす。それらの製品は、販売促進効果など

主力製品に対する貢献によって判断しなければならない。

逆に企業によっては、製品をセットとして販売し、製品本体のほうが

販促品や付属品とみなしていることがある。

 

販促用製品の古典的な例はジレットの安全かみそりである。

同社のかみそりは、利益率の高い替え刃市場を創出するために、ただ同然で

販売された。かみそり自体から高い利益を期待することは的はずれとされた。

問題は、かみそりがどれだけ売れたかではなく、どれだけ替え刃の市場を

創出したかだった。そしてさらに替え刃がどれだけ業績に役だったかだった。

しかし、ある事務用コピー機メーカーの場合はこれとまったく逆の結果と

なった。当初カミソリにあたるものはコピー機だった。替え刃にあたる

ものが、コピーに必要なインク、用紙、洗浄液等の消耗品だった。

そしてコピー機はよく売れた。しかし、消耗品の方はこのメーカーよりも

よい製品を安く売っている事務用品メーカーに負けていた。

もちろんこのメーカーにとって、コピー機が好調なことは意味のないこと

だった。コピー機は製品とは定義していなかった。コピー機だけの成功で

終わったのでは、コピー機を通じて市場をつくるつもりだった本業の

消耗品の観点からは失敗だった。

しかしいまやコピー機そのものが主力製品として成功しうることが明らかに

なった。そこでこのメーカーは、品質が劣る上に高価な自社の消耗品を

無理に売ることをやめた。とたんにコピー機の方は、値上げしたにも

かかわらず売上げが増加した。よくあることだが顧客のほうがメーカー

よりも優れたエコノミストだった。コピー機の耐用年数からして、顧客は

コピー機よりも消耗品に多額の金を使っていた。

 

これらの例は言葉の定義の問題ではない。事業上の重要な意思決定の問題で

ある。問題に対する答えによって、いかなる事業活動を行うかが決定される。

 

この続きは、次回に。

 

トップへ戻る