P・F・ドラッカー「創造する経営者」⑳
第3章❖利益と資源、その見通し
□ 利益への寄与
事業そのものの分析や、業績をもたらす領域の分析において基礎とすべき
基本的な事情は何か。
今日、あらゆる経営者が数字の洪水に悩まされている。毎日、次から次へと
数字が出てくる。しかしそれらのうち意味のあるものは何か。
そしてその意味するところを迅速かつ効果的にしかも信頼できる形で
伝えるには、何をいかにして示すべきか。
本章およびその後の数章は、事業のレントゲン写真ともいうべきものを
扱う。そして分析の考え方を扱う。
具体例として、ユニバーサル・プロダクツ社(仮称)の分析を単純化して
示す。同社は比較的順調な中規模メーカーである。
アメリカとヨーロッパにそれぞれの経営機能、工場、営業機能をもち、
数十年来両方の市場でほぼ同規模の事業をしている。
ここでは、業績をもたらす領域のうち製品についてのみ分析する。
しかし、その分析の考え方は、市場、顧客、最終用途、流通チャネルなど
業績をもたらすほかの領域についての分析にも有効なはずである。
また、事業がサービスの提供である企業にも有効なはずである。
この分析では、単一の製品だけでなく、全製品を対象にする。
製品ごとの業績、コスト、資源、見通しを、企業全体の業績、資源、
活動との関連において分析する。
作業量という概念以外はほとんど通常の経理の数字を使っている。
しかし、本章に示す各種の表は見慣れないものかもしれない。
分析は、第1章で述べた「企業の現実」に関する仮説からスタートする。
(1) 利益の流れとコストの流れは同じではない。
(2) 事業上の事象は、成果の九○%が一○%の原因から生まれるという
社会的事象に特有の分析の仕方をする。
(3) 利益は売上げに比例し、そのほとんどは、わずかな種類の製品、
市場、顧客によってもたらされる。
(4) 同じく、コストは作業量に比例し、そのほとんどはわずかの利益しか
うまないおそらく九○%という膨大な作業量から生じる。
この続きは、次回に。