P・F・ドラッカー「創造する経営者」㉝
第4章❖製品とライフサイクル
□ 製品を一一に分類する
市場には、多様な機能と品質をもつ製品やサービスがある。そして極めて
多くの市場があり、きわめて多くの最終用途がある。多様な顧客があり、
製品やサービスを市場や顧客に運ぶ多様なチャネルがある。
しかし、事実上あらゆる製品、市場、流通チャネルがいくつかの類型に
分けられる。極端な例外は別として、すべての製品は次の一一の類型に
分類される。
最初の五つの類型は、診断も容易、処方も簡単である。
(1) 今日の主力商品
(2) 明日の主力商品
(3) 精算的特殊製品
(4) 開発製品
(5) 失敗製品
次の六つの類型は、問題のある製品である。
(6) 昨日の主力製品
(7) 手直し用製品
(8) 仮の特殊製品
(9) 非生産的特殊製品
(10) 独善的製品
(11) シンデレラ製品あるいは睡眠製品
ユニバーサル・プロダクツ社の場合、個々の製品がこれらの類型のいずれに
該当するかは、六六ページの表5のとおりである。なお一一という類型の
数に特別の意味はない。二、三、増やしても減らしてもよい。
この類型は製品の分類だけでなく、業績をもたらすあらゆる領域の分類に
適用することができる。そして、どの類型に分類するかによってその後の
処方も決まってくる。
すなわち、これらの類型への分類によって、製品、市場、流通チャネルに
ついて、さらには企業全体について暫定的な診断を行うことができる。
(1) 今日の主力製品
この類型の製品は常に大きな売上げを占める。また大きな利益をあげて
いる。コストは最大の場合でも製品別売上総利益以下である。
貢献利益係数は最高ではなくともきわめて大きい。
通常、デザイン、価格、販売促進、販売方法、アフターサービスを改善
することによって成長の余地が残されている。しかし改善を行っても、
その成長には限界がある。現在ピークあるいはピークに近い。
ほとんどの企業に、今日の主力製品が一つはある。例示のユニバーサル・
プロダクツ社は明らかな今日の主力製品をもたないという点で例外的で
ある。
製品Aは昨日の主力製品になりつつある。製品Cには潜在的な成長力は
あるが、今日のところ資源的な支援がなく、むしろ明日の主力製品に近い。
今日の主力製品は通常、資源的には十分な支援を受けている。しかし、
望むらくは資源的な支援は、現在の貢献利益と貢献利益係数が正当化する
よりも少なくしなければならない。ところが今日の主力製品は、通常は
合理性の範囲を超える支援を受けている。
この点については製品Aが典型的である。
今日の主力製品へのそのような資源の過剰配分は、成長の余地があまり
ないことが明らかであるにもかかわらず、支援すれば成長させられる
はずであるとの希望的観測がまだ根強く存在するからである。
実際には、すでに昨日の主力製品になっている製品とみなす傾向さえある。
もちろんそのような製品は貢献利益係数によって知ることができる。
その点製品Aは落第である。
この続きは、次回に。