P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊷
□ 製品の性格の変化をとらえる
製品についてばかりではなく、成果をもたらすほかの領域についても、
分類はそれほど難しいことではない。しかしいずれの領域についても、
分類だけで有利な診断には不十分である。
製品の性格の変化、特に衰退に向かっての変化を把握しなければならない。
「明日の主力製品から今日の主力製品への変化、さらには、昨日の主力
製品への変化をいかに知るか」「開発製品の独善的製品への変化をいかに
知るか」が問題である。
これらの変化を知るためには簡単な原則が二つある。
第一に、予期したものと違う結果が出るようになるならば、類型変化の
前兆と考えられる。少なくとも、分析が必要である。
第二に、あらゆる製品、市場、最終用途、流通チャネルにはライフスタ
イルがある。成長のために要する追加コストを分析すれば、ライフスタ
イルのどの段階にあり、どれだけの余命があるかが明らかになる。
特に第一の原則からして、新製品に対する期待については常に事前に
それを書き留めておくことが必要である。
人間の記憶には驚くほどの融通性がある。今日やっと営業費を賄っているに
すぎない製品が、三年前には産業に革命をもたらすと期待されていたことを
記憶しているものは少ない。「製品ラインへのちょっとした付け足しとして
スタートした製品だが、それにしてはなかなかよくやっている」などと
錯覚している。
期待を事前に書き留めておくことによってのみ、あとで検討するうえで
必要な信頼できる記録を用意することができる。
期待と業績を比較することによって、特に二つの大きな問題、独善的製品と
いう退化病の進行と、シンデレラ製品という機会の喪失を発見することが
できる。また、期待に照らして業績を評価することによって、非生産的
特殊製品を発見することができる。なぜならば、非生産的特殊製品も、
そもそものスタート時には、高い利益、主力製品への成長、大市場の創造、
あるいは少なくとも主力製品の大口顧客を確保する補助製品の役割を期待
されていたに違いないからである。
● 類型
幾つかのものに共通する基本的な性質や特徴。
「犯罪を―によって分類する」「―化」
● 融通性
● 退化
進歩が止まって以前の状態に逆戻りすること。また、衰えたり規模が
小さくなったりすること。「記憶力が―する」⇔進化。
この続きは、次回に。