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P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊹

第5章❖コストセンターとコスト構造

 

□ コスト管理の五つの原則

 

コスト、およびその定義、測定、管理は、企業活動に関わる問題のうち、

研究のしすぎとまではいかなくとも最も徹底的に研究されてきた分野である。

この分野では、企業に関係する者のうち、最も多くの、最も多忙な、最も

多様な手法をもつ人たち、すなわち会計士、エンジニア、システムアナリスト、

OR専門家が汗を流してきた。

アメリカやイギリスの経済学者のうち、企業理論の専門家たちも、主として

コストとその性格や管理について研究してきた。ドイツの経営経済学者

たちも同じことをしてきた。膨大な作業がコスト管理の研究に費やされ、

膨大な時間がコスト分析の研究に費やされた。

コストに関しては、手法、技法、文献は豊富である。その結果、ほとんどの

企業において、春の鼻風邪と同じように、毎年コスト削減キャンペーンが

行われている。そのうっとうしさも同じである。しかし、半年もすれば

コストは元どおりとなる。そして再び次のコスト削減キャンペーンの準備が

始まる。

 

唯一の例外は、倒産寸前の企業を引き受けた新しいマネジメントによる

コスト削減の奇跡である。かつては、優れたマネジメントのもので、独占的

とはいえないまでもリーダー的な地位にあった企業が、弱体な後継の

マネジメントのもとに倒産寸前に陥る。

そこであとを引き受けたマネジメントが、製品らしい製品や利益を生んで

こなかった老朽工場を閉鎖するなどごく当たり前のことを行うことによって、

コストの三分の一あるいは二分の一を削減する。

しかし、そのようなコスト削減の奇跡といえども、つまるところは新しい

マネジメントが再建に取り組むための若干の時間を与えてくれるにすぎない。

 

この続きは、次回に。

 

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