P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-9
化学品、医薬品、化粧品をつくっているある企業は、個性的かつ攻撃的で、
ヒラから昇進してくる事業部長クラスの人間を発掘し、育成し、束ねる点に
際立った能力をもっていた。
彼らはみな、担当の事業部をあたかも自分の企業のようにマネジメント
していた。互いに直接的かつ危険な競争相手とみなす場合さえあった。
それにもかかわらず、全社的な問題については、彼らの全員が同じく
優秀な部下をほかの事業部に譲ったりもしていた。
しかし、トップマネジメントは、自分たちが特筆すべきことを実現して
いるとは特に意識していなかった。
シアーズ・ローバックほど、詳細に自社を分析している企業はほかに
あまりない。しかしそのシアーズさえ、この点においては例外では
なかった。
外部から見れば、シアーズの最も優れた能力は、明らかに適切な商品設計、
的確な品揃え、適切な仕入れ先、特に全額出資や共同出資の工場による
生産にあった。さらには、店舗の立地や設計や建設にあった。
しかしそれらのものは当のシアーズの人間にとっては、特に重要なもの
とは考えられていなかった。彼らが内部において、あるいは外部に対して、
強調していたものは販売だった。
しかし、外から見てみるなら、シアーズの販売において際立つものは何も
ない。にもかかわらず、シアーズではスターは常に店長だった。
トップマネジメントへ昇進するのも、設計の人間よりも、店長経験をもつ
人間のほうがはるかに多かった。
もちろん、内部の人間が、自社が何をしており、何によって利益を得て
いるかについて、必ず間違った評価をするというわけではない。
しかし自分たちの評価が常に正しいと決め込んではならない。
少なくとも自らの判断を検証していかなければならない。
この続きは、次回に。