P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-16
(2) 金と時間の使い方
同じように重要な問いが、「顧客は何を買うか。金と時間をどう使って
いるか」である。
あらゆる企業が、顧客の消費額、可処分所得、自由裁量所得、自由裁量
時間のいかなる割合が、自社の製品に向けられており、かつその割合が
増えているか減っているかを知ろうとしている。
もちろん、それらのことは重要である。しかし、「顧客は、その金と時間を
いかに使うか」についての知識のほうが、はるかに多くのことを教えて
くれるはずである。
顧客が何を買うかを問うことによって、ある大手の建設資材メーカーは
価格や品質が自社製品の購買の決定要因ではないことを知った。
購買の決定要因は、設備投資として会計処理されるか、運転費用として
処理されるかにあった。
公的機関にとっては運転費用として処理できたほうが購入しやすかった。
これに対し、民間企業にとっては収益率を下げる運転費用ではなく、
資産として計上される設備として処理できたほうが購入しやすかった。
そこで同社では、公的期間向けには一○年契約のレンタルとし、民間企業
向けには一○年の無料補修付き一括払いで販売することにした。
(3) 価値選好
これに関して、通常の市場調査や顧客調査では提起されていない二つの
問いが出てくる。
「顧客、あるいはノンカスタマーは、他社から何を購入しているか。
それらの購入は、顧客にとっていかなる価値があるか。
いかなる満足を与えているか」
「それらの満足は、わが社の製品やサービスから得られる満足と、現実に
あるいは潜在的に競合するか。それらの満足は、わが社の製品やサービス、
あるいはわが社の潜在的な製品やサービスが提供できるか、あるいはわが社の
ほうがよりよいものを提供できるか」
これらの問いが明らかにするものは、市場の価値選好である。
「顧客がわが社から得ている満足は、顧客の生活においてどの程度重要か」
「その重要度は今後大きくなるか小さくなるか」
「いかなる分野において、顧客はまだ満たされていない新しいニーズないし
十分満たされていないニーズをもっているか」
● 選好
複数の選択肢の中から好みに応じてあるものを選ぶこと。
「国民生活―度調査」「女性が―する住環境」
この続きは、次回に。